高学歴日本酒ベンチャーWAKAZEで「かもす」

山口さんがインターンで働いた酒蔵のひとつ、WAKAZEは、慶應大学院や東大出身者が起業した、東京・三軒茶屋に醸造所併設レストランと、パリの郊外の2拠点に酒蔵を構え、ヨーロッパで精力的に販売する新進気鋭の酒造会社だ。ここで山口さんは時々店にも立ちながら、商品開発も行い、これまでになかった新しいタイプの「SAKE」を作り出した。当時は日本酒の香りづけは醸造後にするもので、醸造途中に山椒やゆずなどを加えることはなかったが、山口さんらが開発した「FONIA(フォニア)」は、発酵の途中で生姜、山椒、柚子などを加えた。そしてこれが、山口さんが造った初めてのSAKEであり、世界初のボタニカルSAKEとなった。

写真提供:山口歩夢

また、山口さんは同じ頃、食への興味も広げつつあった。『もやしもん』でも、発酵させたエイの刺身やら寝かせたアザラシの内臓やら、食べ物とゲテモノの境界線上を味わうシーンがいろいろあるが、山口さんの最初のチャレンジは「タガメ」だった。

世界で2番目に匂う発酵食品「ホンオフェ」。(c)石川雅之/講談社『もやしもん』1巻より
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フルーティで洋ナシフレイバーのタガメ

食べた感想はというと、
「塩漬けのタガメをゆでたので、味は塩辛いだけですが、香りは格別でした。洋ナシ以上に、洋ナシというか。フルーティで、甘やかで、素晴らし」く、この体験を機に、昆虫食にはまりだしたそう。さらに、サークル仲間の紹介で知り合った、篠原裕太さんの手引きで、昆虫が持つ食のポテンシャルの高さを知り、昆虫も肉や魚、野菜や果物と並ぶ、食材の一つと考えるようになったという。

写真提供:山口歩夢

篠原裕太さんは、小学生の頃から昆虫を愛で食す、昆虫食の伝道師だ。狩猟免許や森林ガイド資格保持を持ち、料理修行も経て、昆虫、植物を含む地球上の生物を食材として味わう「ANTCICADA」を2020年6月にオープンした。そして山口さんは、このレストランの共同経営者となり、料理に合う酒を醸造したり、昆虫食をともに開発したり酒を担当するようになった。