妻に浮気されたのに、離婚で1600万円の赤字…男性の一番の後悔とは

「婚費」の罠

離婚の前哨戦、「婚費」問題

離婚する際、結婚生活において「被害者」である側がむしろ金銭的な負担を強いられることがある。筆者がルポ『ぼくたちの離婚』(コミックス版も発売中)で取材した谷口和成さん(仮名)も、そんな状況に陥ってしまった一人だ。離婚原因が妻・明子さん(仮名)の浮気だったにもかかわらず、離婚によってなんと1600万円もの赤字を被ってしまった。最大の理由は、「婚姻費用(婚費/こんぴ)」の存在だ。

婚費とは、夫婦が別居する際、収入の高い側が低い側に、足りない生活費を補填するもの。例えば、収入ゼロの専業主婦が子どもを連れて夫と別居した場合、「同居していれば発生しなかった生活費」が新たに発生する。夫はこれを補填する義務があるというわけだ。婚費は民法760条で規定されているため、要件さえ満たしていれば請求できる。

婚費の額は「夫の年収」「妻の年収」「子供の年齢」「子供の人数」によって決まり、裁判所が決めた算定表には、その目安が書いてある。夫の年収600万円、妻の年収300万円で別居した場合、妻が夫に請求できるのは毎月5万円程度。夫の年収800万円、妻が無収入の専業主婦で14歳以下の子どもを1人連れて別居した場合なら、妻は夫に毎月16万円程度を請求できる。こんな感じだ。

 

浮気した側が「儲かる」仕組み

谷口さん夫婦は明子さんの浮気疑惑によって関係が悪化。1年ほど家庭内別居が続いたところで、谷口さんの海外転勤が決まる。すると明子さんはこれを「別居状態」だと主張して、婚費を要求してきたのだ。当時、明子さんの収入は谷口さんに比べて著しく低かったため、その額はかなりのものになった。

しかも谷口さんの海外赴任中、明子さんは谷口さん名義のマンションに住み続けていたが、月々のローンは、結婚当初からずっと谷口さんが100%払い続けていた。頭金こそ谷口さんと明子さんの折半だったが、その後明子さんは毎月の支払いを1円たりとも負担しなかったのだ。なのに、婚費からローン分は差し引かれない。マンションのローンは「支出」ではなく「夫婦の共有財産の積み上げ」だからという理由で。

『ぼくたちの離婚』2巻より

結局、谷口さんは離婚裁判を起こし、海外赴任開始から2年後に晴れて離婚。ただし婚姻中に共同で形成した財産は離婚時に精算しなければならず、そこには結婚“後”に購入したマンションも含まれる。しかも不動産の分与は名義の有無とは無関係なので、谷口さんは自分名義のマンション査定額から住宅ローンの残高を差し引いた額の半額を明子さんに支払う羽目になった。そこに10年間の結婚中に形成した預貯金額の半額、海外赴任中に発生した婚費2年分が上乗せされた結果、谷口さんの収支はマイナス1600万円にもなってしまったのだ。

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