依存症は脳の働き「報酬系」の変化——ではきっかけとなる最初の報酬は?

誰でも嬉しい「人とつながれる!」喜び
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「人とつながれる!」そのうれしさが入り口に

依存対象になりやすいものや行為は、いずれも脳の報酬系の強化につながります。しかし、直接的な薬理作用をもつアルコールや薬物であってさえ、誰もが最初に体験した時点でその効力のとりこになり、必ず依存症に進んでいくものではありません。

最初に得られる報酬は、多くの場合、"人とのつながりを実感できる"という社会的な喜びです。人とのつながりを日頃感じにくい、楽しいと感じることが少ない人ほど、ものや行為によって得られた感覚は手放しにくいものでしょう。「もう一度」が重なり、乱用につながっていく場合も多いのです。

【写真】最初の報酬「認められた」「居場所ができた」脳への最初の報酬は、人とつながる喜びのことが多い photo by gettyimages

心の依存が生じると、「それ」を続けること以上に大事なものはなくなってしまいます。家族や仕事、勉強、健康などは二の次。最初の頃に感じていた"人とつながる喜び"でさえ、意味を失っていきます。

とくにアルコールや薬物の場合、誰かといっしょに楽しもうとすると、費用がかさみやすくなります。余計な出費をするくらいなら、「それ」を続けるための資金にまわそうという発想になりやすいのです。

入り口は"人とつながる喜び"であったのに、「それ」を続けるために自ら進んで孤立していくようになるのが、依存症です。孤立した本人は、ますます対象への依存を強める、という悪循環に陥りがちです。

また、苦痛をかかえ続け、生きづらさを感じている人ほど、人に頼らず自分だけで苦痛に対処しようとしがちです。苦痛への対処法として、依存症が始まっていくこともあります。

「依存症は治らない」は本当?

依存症は治らない——そんなふうにいわれることがあります。

たしかに報酬系の回路が活性化するしくみや、そのときの記憶は完全には消えません。治療を続け「もう大丈夫。今度こそうまく使えるだろう」などと思っても、再開すればまた、コントロールがきかなくなります。

これが「依存症は治らない」といわれる理由です。

国際的な共通見解でも、長年続いてきた依存的な行動は、治療を始めればピタリと止まるものではない、とされています。たとえば薬物依存症は、「再発と寛解(乱用が止まり、落ち着いた状態)をくり返す慢性疾患」ととらえられています。

それでも「再発=失敗」ととらえてあきらめるのではなく、治療に取り組み続ければ、行きつ戻りつしながらも回復へと向かっていくでしょう。

ものや行為に頼る人は、基本的に弱音を吐くのがうまくありません。本当は傷ついたり、落ち込んだりしていても、人に頼らない、頼れないから、特定のものや行為に頼りきりになりやすいのです。しかし、人に依存するのは、決して悪いことではありません。誰かに頼ってもいいのです。

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