なぜ、外国人にそんなに厳しいの?

もう、逃げ場がない。

中には、「そもそも妊娠するような行為をするのが悪い」「技能実習生は仕事だけしていればいい」という人もいるかもしれない。しかし、誰にだって恋愛もセックスもする権利はある。異国の地で心細い中、誰かを頼りたくなったり側にいて欲しいと感じたりするのは人間として極めて自然なことではないだろうか。

今、外国人の技能実習生の労働力は、農業や建築業などさまざまな分野で欠かせない存在になっている。それなのに、低賃金で重労働、パワハラ、セクハラなどの問題も多発している。そして、「恋愛もするな」というのはあまりに非人道的すぎる

しかも、妊娠は恋愛だったとも限らない。技能実習生という立場の弱さから、性暴力に合うことだってある。ある支援者は「ほとんどの女性の実習生がセクハラを受けている。性行為を強要されることも、逃げられない、やめられない中で強いられる」と現状を述べている。彼女たちが日々どれだけ強い不安、恐怖の中にいるのか、それでも故郷の家族にとの思いで働き続ける姿を想像すると、胸が痛い。

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私は、留学生や仕事を持つ者として海外に住んで、足掛け4年目となる。かなり身分は保障され、経済的にも問題はなく、言語コミュニケ―ションに困らなくても、心細さは常について回るし、何より社会システムを理解するのは本当に難しい。例えば、冒頭に書いた「119番にかければ救急車が来てくれる」といった現地では誰もが知っている大切な社会通念も、日々の積み重ねでその存在をなんとか知っていくしかない。特に、医療にアクセスするのはどの国も仕組みが違うからいつだって難しい。

土日なく働き、日本語を学ぶ時間なんてないだろう中で、リンさんの感じていたであろう困難は想像を超えている。

他国で孤立してしまうと、基本的なアクセスにたどり着けないことも多い。写真はイメージです。photo/iStock

このように、「外国人」であることに加え「外国人技能実習制度」によって生み出される脆弱さまでも抱えながら、妊娠を誰にも相談できず、産む、産まないを自分で決める権利を奪われている背景があったリンさん。本件が有罪になれば、「人権侵害の現状が十分深刻には受け止められていない」と捉えられても仕方ないだろう。孤立した女性にそんなにも冷たい国で、本当によいのだろうか。これは、リンさんの問題だけでなく、日本に生きる私たちに突きつけられた問題だと思うのだ。

リンさんの件は、1月19日、福岡高裁で控訴審判決が宣告される
極めて脆弱な立場に置かれたリンさんの困難、苦しみ、悲しみ、そして我が子に抱いていた愛情に真摯に寄り添った判決がなされること、すなわちリンさんの無罪を、私は心から祈っている。