2022.01.21

他人事じゃない“天涯孤独”…ひとりで生きるために必要な「心の準備」

「今を生きる」という考え方
古田 雄介 プロフィール

人生を達観して逝った元会社員

周囲との関係性を割り切っていまを生きる。この傾向は、様々な福祉介護施設で働き、2021年4月に『誰も書かなかった介護現場の実態』(彩図社)を著した介護士の宇多川ちひろさんからも聞いた。

宇多川ちひろさんの著書『誰も書かなかった介護現場の実態~現役介護士が直面する現代社会の闇~』

天涯孤独で入所する人には物静かな人が多いという。

「淡々と自分のペースで静かに過ごしている人が多くいますね。必ずしも寡黙というわけでなく、良い意味で周囲に期待しない雰囲気を帯びているといいますか」

印象に残っている例として、80代のある利用者との雑談を挙げる。会社員を定年まで勤め上げた人で、食事と車椅子での移動はできるが、排泄は手助けが必要という状態で入所した。妻に先立たれ、子供はなく、連絡をとりあう親戚はいない。

「人生とは? と尋ねたら、『人生とは生きることである。人間として生まれたからには、人として命を使い切ることが人の道だ』と淀みなくおっしゃったのが衝撃でずっと覚えています。愛嬌のある方で、死期が近くなっても静かに受け入れていましたね」

 

まったく身寄りのない天涯孤独な人は介護施設の利用者でも経験則で1割に満たないそうだ。身寄りに甘えたり何かを求めたりする利用者を何人も看取ってきた宇多川さんは、頼る相手がいない人が持つ特有の強みを感じているという。

「推測ですが、身寄りがいる人と比べると、天涯孤独の人は日常から死を考える機会が多くなるんじゃないでしょうか。風邪で寝込んだときや、保険を組むときなど、ふと孤独とその先にある死を思う。その機会が多い人ほど、亡くなるときに達観していることが多いのかもしれませんね」

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