2022.01.23
# ライフ

『サザエさん』で、「させていただく」という表現が使われていない理由

当時は別の表現がメジャーだった
椎名 美智 プロフィール

次にあげる図は、文庫版『サザエさん』全45巻において、そうした「やりもらい」の授受動詞がどのように使われていたのかを示したものです。実際にモノのやりとりを示す本動詞として使われている場合と、他の動詞の後ろに付いて補助動詞として使われている場合(「て」の付いた形と「させて」の付いた形)の3通りの用法のそれぞれについて、使用頻度を調べたものです。

図:『サザエさん』における授受動詞の使用頻度(『「させていただく」の使い方』47ページより)
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また、その現れ方(分布)が偶然の域を超えていると判断されるかどうかを統計によって検定しています。表の下に書いてある統計結果については、『「させていただく」の使い方』の第2章で詳しく見ていくので、ここではどの言葉のどんな使い方が多いか少ないかを書いた、表の下の四角の中を見てください。

この表を見ると、『サザエさん』の時代、モラウ系の授受動詞は本動詞での使用は多いのに補助動詞用法は少なく、反対にクレル系の授受動詞は本動詞での使用は少ないのに補助動詞用法が多いことがわかります。つまり、今から75年〜45年前には、「いただく」よりも「くださる」の方が補助動詞としてよく使われていたということです。

また「させて」の付いた補助動詞は、どれもあまり使われていません。理由はいくつか考えられます。一つは、時代です。「させていただく」は1990年代に使用が高まりますが、『サザエさん』が描かれたのはそれよりかなり前で、最後の作品でも「させていただく」がブレイクする15年ほど前です。

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