他方、晴人さんの家族はどのような反応をしたのか。

晴人さんは、彼の自律性を重んじる両親に反対されるとは思っていなかったが、なんとなく面倒くさくて両親に話していなかった。しかし、数年前に晴人さんと京子さんがこの件で初めてネットメディアに取材を受けたとき、読者のコメント欄で「親に話していないのはマズい」というのを見かけて、とうとう両親に報告したという。

すると両親は、「あ、そうなんだ」というあっけない反応を見せた。それどころか、母親は「京子さんの姓に変えてあげなよ」とまで言ったという。

結局、最初の婚姻届はあみだくじで晴人さんの姓を使うことになった。

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外資企業には旧姓使用を認めないところも

3年毎の離婚・結婚の手続きについて不便なことはないが、改姓は非常に不便だと口を揃えて言う2人。特に京子さんは、勤めている外資系グローバル企業が旧姓使用を許さないことに衝撃を受けた。

グローバル企業なのでセキュリティが厳しく、戸籍姓を使用しないとダメなんです。日本以外の国では別姓が制度化されているので、旧姓使用している海外の支社なんてない。だから日本人だけ旧姓使用が許されないんです。メールアドレスやシステムは海外の本社が一括管理しているので戸籍姓しか使えない。

旧姓使用ができないと“旧姓使用証明書”も出してもらえず、パスポートの旧姓併記も簡単にはできません。旧姓使用は外資のグローバル企業には通用しないときもあるんだと知って、衝撃でした」(京子さん)

〔PHOTO〕iStock

一方、晴人さんの会社では旧姓使用ができるので、当初、彼は「ペーパー上の手続きだ」という気楽な気持ちでいた。しかし、日々の生活の中での精神的な影響力は想像以上だったという。現在、京子さんの姓を名乗る晴人さんは、例えば、保険証、ワクチン接種券、投票券、給与明細は妻の姓だ。人としての活動を実感する場面において、「もう自分じゃないんだ」という感覚を突きつけられ、激しい自己喪失感に襲われるのだという。