コロナの飲み薬「モルヌピラビル」は、本当に「救世主」なのか? 最新の研究が示すこと

2020年から2年間にわたって全世界を機能不全にしている新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)。現在は新たな変異株・オミクロン株による第6波が日本国内に押し寄せ、まだ終息を見通せていない状況だ。

そうした暗いニュースが多い中で、昨年末、厚生労働省が新型コロナの軽症患者でも使える世界初の飲み薬・ラゲブリオ(一般名・モルヌピラビル)を特例承認したことは数少ない明るいニュースだと言える。

とはいえ、この薬は新型コロナにかかった人では誰でも服用対象となるわけではなく、薬自体に一定の限界もある。これまで明らかになっているデータをもとに解説する。(
本記事は1月15日時点までの情報に基づいている。)

ベネズエラ馬脳炎ウイルス治療薬開発の過程で発見

今回承認されたラゲブリオは元々、米エモリー大学発のバイオテクノロジー企業「DRIVE」が米国防総省(俗称・ペンタゴン)国防脅威削減局から資金提供を受け、生物兵器での利用の可能性が噂されていたベネズエラ馬脳炎ウイルスの治療薬開発プロジェクトの過程で見つかった化合物だ。

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遺伝情報としてRNA(リボ核酸)を有する「RNAウイルス」の一種であるベネズエラウマ脳炎ウイルスは人畜共通感染症を引き起こし、極めて少ない量のウイルスで感染が成立する。

感染者の主な症状はインフルエンザのような発熱・頭痛・筋肉痛などで致死率1%未満だが、極めて強い感染力ゆえにまん延した場合は容易に社会を機能不全に陥れる。敵対勢力に軍事・経済の両面から大打撃を与えやすいことから、冷戦時代は東西両陣営で生物兵器への応用が検討されてきた。

その後、この化合物は研究の過程で、アフリカで時折パンデミックを起こし、致死率も高いエボラ出血熱ウイルスなどへの有効性が指摘されるようになる。これに目を付けたのが米フロリダ州マイアミに本社を置くバイオベンチャーのリッジバック・ファーマシューティカルズだ。

エボラ出血熱治療薬として関心を寄せていた同社だったが、2020年の新型コロナパンデミック勃発後、この化合物がコロナウイルスの一種である重症急性呼吸器症候群(SARS)ウイルスや中東呼吸器症候群(MERS)ウイルスに対して実験レベルで有効だったことに着目し、開発ライセンスを取得。

ここに製造と流通の両面でプレゼンスが高い国際製薬企業大手の米メルク社(日本法人名はMSD)が提携し、市販化に向けた臨床試験が始まったという経緯がある。

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