2021年に厚生労働省が提案したこと

2020年、厚生労働省の専門委員会は、出生前検査の実施体制について報告書をまとめた。

これを受け、日本医学会の中に出生前検査認証制度等運営委員会という新しい組織ができて、現在、新しい制度の準備が進んでいる。出生前検査の相談体制などを審査し、実施できる施設を認証する制度だ。

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ただし、この新制度の対象になる検査は、新型の血液検査「NIPT」だけだ。大竹さんが受けた古い血液検査「母体血清マーカー検査」は今もあちこちのクリニックでおこなわれているし、NIPTは確定診断にはならないので「羊水検査」は今なお不可欠な検査である。だが、これらの検査について認証制度ができる具体的な予定は、今のところない。私は、個人的には、すべての出生前検査について、相談体制が保証される制度があるべきだと感じている。

そして、女性自身も変わらなければならない。大事な検査を、医師まかせにしないことだ。
笠井医師は、医師と話すときにはこんなことを思い出してほしいという。
妊婦さんは、遠慮しないで質問すること。ちょっとうるさい患者だと思われるくらいが、ちょうどいいのです。説明を聞くときは、メモをとりながら聞くことで、しっかりと話を聞くことができます。その医師の対応に納得できなければ、他の病院へセカンドオピニオンを求めてもいいのです」

大竹さんは、これまでに何度もメディアに登場し、死産の体験者として取材を受けてきた。でも、その死産に羊水検査がかかわっていたという事実をメディアで語ってくれたのは、今回が初めてになる。

勇気が必要だったことと思うが、大竹さんは、自分ができなかったことを、これから産む人はできるようになってほしいという思いをこめて話してくれた。羊水検査から13年――大竹さんにとって、これは亡くなった赤ちゃんからもらった、ずっと胸の内にあった宿題だった。

笠井医師は言う。
「大竹さんには、心から、拍手を送りたいです。辛い経験をご自分の中に封じ込めず、それを女性たちのための活動に昇華させていることは素晴らしいことです」

大竹さんは、ご自身の辛い経験をふまえて多くの女性たちに寄り添ってきた。周産期グリーフケアはちどりプロジェクトは近々、約900件の回答を得たアンケートをまとめ終える。

起きた事実は、変わらない。しかし、大竹さんは悲しみを力に変え、今、何かを新しく生み出そうとしている。

写真提供/大竹麻美
河合蘭さん連載「出生前診断と母たち」これまでの連載はこちら