この際、政府債務残高や経常赤字が大きく、政情が不安定な国から順に狙われるのが常であり、これらの観点から脆弱性の大きそうな国としてBEAST(ブラジル・エジプト・アルゼンチン・南アフリカ・トルコ)なるフレーズも現れている。
現に、これらの国の通貨は過去の正常化局面でも荒れることが多かった。
「潜在的な発作」を警告
もちろん、資本流出や通貨安、結果としてのインフレに見舞われた新興国は利上げや自国通貨買い為替介入、財政支出削減などの対策を講じることが予想される。
しかし、そうした財政・金融上の引き締め政策は通貨安やインフレを抑制する一方、内需の勢いを削ぐものでもある。
結局、FRBの正常化にともない生じる混乱に関して、放置しても対応しても相応のコストを伴うという「難しいトレードオフ(difficult tradeoffs)」に新興国は陥るリスクがある。
このトレードオフに対してIMFは「明確で一貫性のある政策計画を提示することで市井の人々の理解が得られ、物価安定に寄与する」と対話の重要性を説くが、現実的にはFRBが想定以上に正常化プロセスのアクセルを踏み込めば、新興国中銀の情報発信などはほとんど市場で聞いてもらえない公算は大きい。
より具体的には、外貨建て債務については為替ヘッジを推奨し、借り換えリスク抑制のために債務の長期化(期間の短い債務を長い債務へ借り換えすること)を推奨するなど基本的な財務上の提案もIMFは言及しており、こちらのほうが堅実な対応と言えそうである。