無罪請負人の心が切り裂かれた「二つの薬害事件」の中身が凄すぎる

弘中惇一郎弁護士の自叙伝に書かれたこと

カルロス・ゴーン、三浦和義の弁護士

この本を読むまで、私は弘中惇一郎という弁護士を誤解していた。弘中弁護士をご存じないむきには、カルロス・ゴーン氏の弁護人と言えば「ああ」という人もいるのではないだろうか。日本屈指の刑事弁護士として彼はこれまで、ゴーン氏以外にも小沢一郎氏、鈴木宗男氏、三浦和義氏などの弁護も手掛けている。

というと、お金持ち専門の弁護士という印象を持たれるかも知れない。私もかつて暴力団専門に弁護を引き受けて「闇の守護神」と言われた弁護士を連想していた。

Photo by GettyImagesPhoto by GettyImages
 

しかし弘中氏の自叙伝「生涯弁護人 事件ファイル1」「同 2」(いずれも講談社刊)を読むと、決してそうではないことがわかる。

彼の弁護士としての振り出しは、安保闘争などで逮捕された学生たちの弁護だった。さらに在日外国人の人権を問うた「マクリーン事件」(どの憲法の教科書にも紹介されている事件を若き弘中弁護士が担当していたことに驚いた)→薬害事件→医療過誤事件といった、敢えて言ってみれば人権派弁護士としての遍歴が綴られている。

とくに私の胸を苦しくさせたのは、「事件ファイル1」で紹介されたクロマイ薬害事件である。

クロマイ(正式名称・クロラムフェニコール)は1949年にアメリカの製薬会社で開発され、発疹チフスに優れた効果があるとして患者に投与されていた。だが再生不良性貧血による死亡例などが報告されるようになり、52年にはFDA(米国食品医薬品局)から副作用の警告がなされ、軽い疾病への使用が規制されていた。

にもかかわらず、原告の次女である井上千華ちゃんは投与されていて、ついに小学校二年生の1972年、再生不良性貧血の診断を受ける。

《この病気は、体内の造血機能全般が損なわれ、血液中の赤血球、白血球、血小板がすべて減少する。(中略)動悸・息切れ・倦怠感・めまいなどの症状が出る。(中略)皮下出血・歯肉出血・鼻出血などが起こる。》

《これらすべての症状が出てくるので、最期は非常に厳しい。「こんな苦しそうな子供の死に方をほかに知らない」と表現する医者もいたほどだ。》(同書p315)

関連記事

おすすめの記事