日本がいつの間にか「モノを売って稼ぐ国」から変貌していた…!

経常黒字のほとんどが「投資収益」

国の黒字や赤字とはどういう意味なのか? 日本やアメリカ、イギリス、中国などの国々はどのような経済構造なのか? 財務省・IMF・世界銀行などで活躍され、教養としての金融危機を上梓した宮崎成人さんが解説します。

 

同じ黒字国(赤字国)でも経常収支の中身は様々です。そこで、経常収支の分野のどこが強いか弱いかを見ることによって、国による経済構造の違いが見えてきます。ここでは、いくつか代表的な例を見ていきましょう。

日本

日本は過去何十年も経常収支黒字国です。トヨタやキヤノンのような日本を代表する大企業だけでなく、特定分野に強い数多くの中小企業の製品が海外で取引されていますので、ずっと貿易黒字を出し続けていると思ってしまいそうですが、現実は異なります。

たしかにかつては財(モノ)の貿易が黒字を稼ぎ出していましたし、それが日米貿易摩擦の原因となっていました。

しかし、現地生産が進んだことや、日本企業がいくつかの分野で競争力を失ったこと等もあって、貿易黒字は徐々に縮小し、2011年の東日本大震災以降、貿易収支は赤字ないし無視できる程度の黒字しかありません。

他方、日本が過去の貿易黒字を積み上げた巨額の対外資産からのリターン(第一次所得収支)は、着実に増えてきています。特にここ十年ほどは、海外子会社からの配当が順調に伸びて、現在は第一次所得収支の半分を占めます。

つまり、現在では経常黒字のほとんどが過去の投資からの収益になっており、日本はモノを売って稼ぐ国から、投資収益で稼ぐ国に変わったのです。なお、インバウンド旅行者が大幅に増えたため、新型コロナ危機前までは旅行収支が黒字になっていました。

〔PHOTO〕gettyimages

米国

米国の強みはウォール街の投資資金やハリウッドに代表されるソフト・パワーでしょう。実際、投資収益(第一次所得収支)やサービス収支は黒字になっています。

他方でモノの貿易がずっと巨額の赤字のため、経常収支全体では赤字が続いています。その要因の一つがグローバル化です。アップル社のiPhoneに代表されるように、米国企業の設計と特許に基づき、世界中から部品を調達して中国で組み立てた製品は、中国からの輸入にカウントされます(1)

貿易赤字は、米国の弱さ(自動車等一部産業の低い競争力)と強さ(付加価値の高い知的作業に特化)の双方を示していると言えます。

(1)最終的な製品価格ではなく、製品になるまでの付加価値のベースで貿易統計を作る動きがあります。それによると、iPhone1台の代金のうち、設計等の知的所有権部分は米国に帰属しますので、輸入額はかなり低くなると同時に、輸入先も部品ごと(半導体は台湾、液晶は韓国等)に分かれ、中国からの輸入額は組み立て代程度に小さくなるはずです。

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