誰かが部屋のドアを開けようとしている

明日の出発に備えてベッドでウトウトとしていると、突然何者かがガチャガチャと部屋の鍵を開けようとしている音が聞こえた。「え! 怖っ!」。

私は慌ててヒロさんの部屋を壁越しにノックした。すると彼は私の部屋へ駆けつけるために部屋を飛び出し、その瞬間、ドアを開けようとした何者かは逃げていった。

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「大丈夫だった……? うわ、鍵壊れてるじゃん。あいつ怪力だな……」。ドアを開けようとしたのは、雪男のように身体が大きい男性だったらしい。ドアを見ると、あまり頑丈ではない造りの鍵が壊され、ロックがかからない状態になっている。

「これじゃあ危なっかしくて寝ていられないよね。僕と部屋を交換したほうがいい。鍵は宿の主人に事情を話して交換してもらうよう頼むから心配しなくていいよ」

冷静かつ迅速な判断、何て頼りがいのある男性なんだろう……。特別見た目がタイプというわけではないが、思わず男性として意識してしまう自分がいた。

塩でできたホテルの部屋。写真提供/歩りえこ

翌朝、壁を叩く音で目が覚めた。「りえちゃん、起きてる? アラームめちゃくちゃ鳴ってるけど……」。時計を見てギョッとして飛び起きた。長距離移動の疲れがドッと出たのか、起きる予定時刻をかなり過ぎてしまっている。

大慌てで支度すると、ヒロさんがドアの入口前で待っていてくれた。「慌てなくて大丈夫だよ。はい、これ今日の分の薬と朝ごはん」

昨日会ったばかりなのに、この人の顔を見るとなぜこんなにも落ち着くんだろう? 私は彼と一緒にウユニ塩湖ツアーに行く4WD車に乗り込み、この世の天国とも呼ばれる絶景へと出発した。

彼は昨日と同じようにずっと私の体調を気遣ってくれ、ツアー中も「こんなポーズ面白いんじゃない?」などと言い、ウユニの素晴らしい絶景記念写真をアングルにこだわって一日中撮影してくれた。ツアーには他の参加者もいたが、一番の年長であるヒロさんはリーダー的な存在で皆をまとめつつも私の世話を焼きまくりだった。

要領も気立ても良く、穏やかで頼りになる。しかも旅や写真、カメラ好きっていう共通の趣味もあるし、ちょっと最高じゃない?

降った雨が流れることなく、大地に薄く膜を張ることで、空を湖面に映し出す「天空の鏡」と呼ばれる神秘的な絶景が現れる。写真提供/歩りえこ