2022.01.12
# 企業・経営

「円安はいいもの」という思い込みを続けていると、日本が「大変なことになる」理由

加谷 珪一 プロフィール

競争力があれば為替は関係ない

1985年のプラザ合意をきっかけに、日本は猛烈な円高に見舞われた。プラザ合意前、1ドル=250円だったドルは一気に値を下げ、10年後の1995年には100円を割った。1ドル=360円の時代とは逆に、実勢を超えた円高といってよいだろう。ではこの時、日本の輸出が衰えたのかというとそうではない。

プラザ合意翌年、日本の輸出は一時的に減少したが、すぐに増加に転じ、しかもプラザ合意の前後で貿易黒字はむしろ拡大した。円高に対応するため日本メーカーがコスト削減努力をしたことも大きいが、為替の影響を受けなかった最大の理由は、日本メーカーの競争力が高かったからである。

こうした歴史的経緯を考えると、アベノミクスで採用された円安政策はあまり意味がないと考えざるを得ない。

 

量的緩和策の実施で日本円は大幅に安くなり、見かけ上の輸出額が増えた。安倍政権はアベノミクスの成果によって日本の製造業が復活したと喧伝していたが、これは数字のトリックといってよい。確かに円安によって金額ベースの輸出は増えたが、数量ベースの輸出はほとんど増えなかった。つまりアベノミクスによって日本製品が売れるようになったわけではないのだ。

困ったことに、日本メーカーの競争力はここ10年でさらに低下しており、自動車や部品など一部の業界を除いてグローバル市場での存在感をほとんど失っている。先日、パナソニックがテレビの生産を中国企業に移管するというニュースがあったが、日本経済は事実上、モノ作りを放棄した状況にあると判断してよい。

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