2022.01.12
# 企業・経営

「円安はいいもの」という思い込みを続けていると、日本が「大変なことになる」理由

加谷 珪一 プロフィール

だが、こうした理屈が成り立つのは、輸出する品目が一次産品や低付加価値な工業製品に限った話である。付加価値が高い工業製品を生産するためには、必ずしも為替が安い方がよいとは限らない。その理由は付加価値の高い工業を育成するためには、相応の時間がかかるため、その間に有利な条件で輸入ができないと資本と技術の蓄積が進まないからである。

産業基盤が弱い新興国が工業化を達成する目的で、しばしば用いられる政策に輸入代替工業化というものがある。これは、輸入でしか賄うことができなかった製品を自国生産に切り換え、海外への富の流出を防ぐという政策で、戦後のラテンアメリカ諸国や韓国などで採用された。

こうした政策を実施する場合、為替を割高にした方が都合がよい。為替が高ければ原材料や部品、製造装置を有利に輸入できる。一方で為替が高いと輸出には不利になってしまうため、こうした政策を採用する国の多くは国内産業を保護する傾向が強い。

韓国は輸入代替工業化で成功した国のひとつだが、韓国の通貨ウォンは当初からかなり割高に固定されていた。韓国政府は輸入規制や関税などによって自国の産業を保護し、通貨高に誘導することで、素材や部品の輸入に便宜を図ってきた。

では日本政府は自国産業に対してどのようなスタンスで臨んだのだろうか。

 

1ドル=360円は実は円高?

日本は戦後、明示的に輸入代替政策を実施してきたわけではないが、結果的にそうなったと見なすことができる。日本の為替レートは戦後、1ドル=360円でスタートしたが、この固定レートは、当時の日本経済の実状を考えると円高だった。終戦直後に日本で進んだインフレの程度から逆算すると、本来なら1ドル=400円を超えていてもおかしくない。

関連記事