「脳と人工知能」の融合が進めば、何ができる? 何が変わる?

最先端の研究現場からすべての人に送るメッセージ

池谷裕二 Yuji Ikegaya × 紺野大地 Daichi Konno

スペシャルインタビュー

「脳AI融合の最前線」について、分かりやすく解説した新刊『脳と人工知能をつないだら、人間の能力はどこまで拡張できるのか』(講談社)は、発売前から重版がかかり大いに注目を集めている。「ERATO 池谷脳AI融合プロジェクト」の研究総括を務める池谷裕二氏の企画、監修の下、研究員である紺野大地氏が主に執筆した画期的な1冊だ。担当編集の家田有美子が、著者二人の深い本音と熱い想いを聞いた。

人間よりもクリエイティブなものづくりが得意な人工知能

家田 本書には、驚くような最先端の人工知能(AI)技術がさまざま出てきますが、数ある中でも「これは」というものを改めてご紹介いただけますか。

紺野 僕が今すごく注目しているのは、AI自体が何かをアウトプットする技術です。代表的なのが、文章を作成することができる「GPT-3」。将来的には今回のような本も、ある程度データを入れることでポンとAIが一冊書いてくれるようになるかもしれません。期待しています(笑)。

池谷 すでにブログは人間と見分けがつかないレベルまで生成できたという話が本でも出てきますが、小説はまだちょっと人間が書くレベルには達していないかな。この技術は、フェイクニュースも作れるという大きな問題もはらんでいます。

言語の指示をもとに絵を描いてくれる「DALL–E」というAIも登場していますが、こういう何かを生み出すクリエイティビティとかイマジネーションって、実は人間よりもAIのほうが得意なんですよね。クリエイターって特殊な能力だからこそ、少数しかいない。本質的に人間は苦手な分野です。ならばAIに任せればいい。でもそこで出てきたアイディアを、これがいい、これが好みだと選択するのは人間の仕事だと思います。

【写真】池谷裕二氏池谷裕二氏

家田 今回のメインテーマですが、脳とAIがつながると何ができるのでしょう。

池谷 脳の活動は、一つのビッグデータです。それを解読していくのにAIを使うというのが、今成功している分野ですね。

紺野 そこで解読した脳活動のパターンに応じて特定の脳領域を人工的に刺激することで、パーキンソン病やうつ病などを治療する方法も期待されています。

池谷 そういった脳活動を正常な状態に整えるような医療への応用が、「脳AI融合」が広く目指す方向です。そこに加えて「脳の能力を拡張しよう」というのが、いま私たちが進めているプロジェクト。本来、感覚がないから感知できない情報を脳に送るというものです。

たとえば、LとRの発音の識別などもそうですね。私も全然聞き分けられないのですが、脳の活動はLとRで異なる反応を示しているので、それをAIによって顕在化させるんです。実際2017年に大阪のCiNetという研究所で、このLとRの聞き分けは実現されています。

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