「子育て」を「孤育て」にしないために

さて、妊娠・出産のあとは「子育て」が待ち受ける。胎内で育て、世に出すことも大仕事だが、思い通りにならない小さな命を育てていくのは簡単なことではない。2020年発表の漫画は出産でラストを迎えたが、2022年1月刊行の「子育て編」は、別の夫婦のパターンで、今度は「出産した直後」からの入れ替わりが起こる。例えば赤ちゃんの沐浴。母親だって初めてでから当然不安だ。それでも「お母さんは大丈夫でしょ、僕はまだ怖いよ」と言われる。眠れなくてフラフラしているときに「笑顔でいないと赤ちゃん可哀想だよ」と言われる……。

「寝てられる!」と思ったら…(c)車谷晴子/講談社『朝起きたら妻になって妊娠していた俺のレポート 子育て編』
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「子どもを産む→育児が始まる。というのは頭では当然のことと理解できるのですが、実際子育て開始の状態は密室で行われるので目にする機会はあまりありません。
出産は幸せなこととして描かれることが多いですが、現実はめでたしめでたしで終わらないです。出産しても理想のような母性は目覚めないし、育児の能力が装備されるわけでもないんですけど!? って。
お父さんとお母さんの育児のスタート日は本来同じなんですよね」

担当編集も言う。

「前作で『教科書に載せてほしい』『母子手帳と一緒に配ってほしい』というコメントがとても多く、皆さん妊娠・出産・育児をされる中で、きっと周囲の理解や知識がないことが理由で、様々な歯がゆい思いをされてらっしゃるんだろうなと感じていました。
また、『この漫画を読んで救われました』『私だけじゃないんだと思えた』というコメントもあって……。
作中にも出てきますが、『孤育て』と言われることもあるくらい育児中は孤独を感じることが多いと言われています。
特にこのコロナ禍において、人に相談したり会話したりする機会も減って、ますますその傾向が強くなっている中、少しでも、子育てに奮闘されているお母さん・お父さんにこの作品を通して、『ひとりじゃないよ』と感じていただけるといいなと思っています」

もちろん体の中で命を育てられるかどうかの大きな違いはあるけれど、父と母のスタートは同じ。そう思うだけで、「子どもを産む」ことへのハードルはもっと下がるのではないだろうか。