厚生労働省が2021年7月30日に発表した人口動態統計特殊報告令和3年度「出生に関する統計」によると、40歳になった女性が一度も出産をしていない割合は昭和28年生まれの女性が10.2%、昭和46年生まれの女性が29.4%なのだという。30歳時点でいえば、昭和28年生まれが18%、昭和48年以降に生まれた女性は51%と5割を超えている。

もちろん、子どもは授かりものではある。それはわかったうえで、世の女性たちがより出産しやすい状況になるにはどうしたらいいのだろうか。

マンガ/車谷晴子 文/FRaUweb

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産んだら母親になれる、なんて幻想

「出産したら自動的に母になるって幻想だよね」

「産んだら母になるのは事実だけど、実際はひとりの女が母になるための修羅の道をたどってるだけやろ。それが修羅かどうかは人それぞれだけど」

「産んだら母にはエスパーでも備わるん?産んでも最初は泣いてる子がなにを訴えてるかわからんよ」

これはSNSに投稿された声の一部だ。
確かに、たとえお腹の中で子どもが育ち、出産したとしても、そこですぐに「お母さんスイッチ」が入り、育児の知恵がつき、子育てを理解できるなんてことはない。
母乳をあげるのも初めて、抱っこするのも初めて、オムツを変えるのも、沐浴させるのも……。どうやったら生まれたばかりの子どもを守ることができるのか不安に思う気持ちは同じはず。

それなのに、「お母さんになったんだからわかるでしょ」と夫に言われたら……。
そういう夫に対し、離婚を言い渡すことから始まる漫画が、車谷晴子さんの『朝起きたら妻になって妊娠していた俺のレポート 子育て編』である。

車谷晴子さんの漫画『朝起きたら妻になって妊娠していた俺のレポート』シリーズは2020年に漫画アプリPalcy(パルシィ)で連載が開始され、FRaUwebでも紹介するたびに共感の声が殺到する漫画である。多くの人の声を代弁しているのだとよくわかる。
ベースにあるのは、大林宣彦監督の映画『転校生』のような入れ替わりのリアルファンタジー。
優しくて気の利くイクメンと思い込んでいた夫が、出産してから妻に離婚を突き付けられる。その理由がわからないままに意識を失い、気づいたら時間が遡って、妊娠している妻となっていた。そして「自分」である夫の身勝手な行動に驚愕し、イラつき、妻が離婚したいとまで思う気持ちを完全に理解していく。

(c)車谷晴子/講談社『朝起きたら妻になって妊娠していた俺のレポート』

注目すべきは、相手をイラっとさせる言動が、決して悪意をベースにしたものでないことが多いということだ。
例えばつわりで苦しんでいるのに「記念日だからいいレストランに行こうぜ」とフレンチレストランを予約して連れて行ったり。「大変ならオレの分のご飯は『作らなくていいよ』」といって、ニンニク臭たっぷりの餃子を持ち帰ったり……。
つわり体験者は「なんじゃそりゃ!」と思うだろうが、決していじめたいとか、悪意とかではない。単に「知らない」「想像力が足りない」だけ。自分が同じ立場になれば瞬間で理解できることも、なかなか想像するのは難しいのだということがよくわかる。

そんな風に妊娠・出産のリアルを明確に、ユーモアたっぷりに描いていることで「教科書に載せてほしい!」「夫に先に読ませたかった!」と声が殺到しているのである。

車谷さんは言う。

「正直そう言っていただけるとは予想していませんでした。
ただ私自身が妊娠出産育児と経験して『そんなの聞いてませんが!?』や『事前に教えといてほしかった……!』と何度も感じていたし、『わからないことだらけで不安だった』という話もよく聞いたので、そのあたりが漫画の中に反映されたのかもしれません。

振り返れば出産前に赤ちゃんに触れる機会自体が少なく、学校でもほとんど教わらないのに、出産も育児も『みんなやってきたことなので、あなたもできるでしょう』という世界に当然のように放り出されるのはなかなかハードな話です。
漫画なので楽しく読んでもらえるように描くことが一番の目標ですが、もやもやした気持ちの言語化のお手伝いや、知らなかったことを知るきっかけになればそれもまたとても嬉しいです」