中国が驚異の経済発展を遂げた一方、世界の貧困問題が解決しないワケ

世界の貧困人口の約3分の2が集中

1日1.9ドル未満で暮らす「絶対的貧困」の状態にある人々の割合は、1990年の約36%から2017年の9.3%にまで、劇的な減少を遂げた。しかし一方で、アフリカのサブサハラ諸国では、いまだに人口の約40%が絶対的貧困状態に置かれているという。こうした貧困問題を解決する糸口は、果たしてどこにあるのだろうか。

世界史の中で起きたさまざまな金融危機の裏にあるストーリーから国際金融の基礎知識を描き出した『教養としての金融危機』著者による、発展途上国の貧困問題についてのコラムを特別にお届けする。

アフリカに集中する絶対的貧困

貧困の中で暮らす人々は、世界中にどのくらいいるのでしょうか? 世界銀行では、2011年の購買力平価(個々の国の物価水準を考慮した為替レート)で1日1.9ドル未満で暮らすことを貧困と定義しました。これを絶対的貧困と呼ぶこともあります。それは、一国の中で、他の人々に比べて所得が低い人たちを示す相対的貧困と区別するためです。相対的貧困は、国民を可処分所得の順番に並べた際、ちょうど真ん中の人の所得の半分以下の所得しかないことと定義され、先進国にも当然存在し、日本では相対的貧困率が比較的高いと指摘されています。

絶対的貧困層が世界人口に占める比率である貧困率は、1990年には約36%でしたが、着実に低下して2017年には9.3%にまで下がりました。これは国際社会が誇れる、歴史的な進展です。しかし、この劇的な改善をもたらしたのは人口14億人の中国の驚異的な経済発展であり、それ以外の地域での進展は限定的です。たとえば、サブサハラ諸国の貧困率は2018年時点で依然として40%を上回っています。その結果、世界の貧困人口の約3分の2がサハラ以南のアフリカ諸国に集中しています。つまり、持続可能な開発目標(SDGs)の第一の目標である貧困の撲滅のためには、アフリカの貧困問題に取り組むことが不可欠なのです。

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絶対的貧困を削減するには、その国の経済が発展し、その果実が国民の中の貧困層に及んでいく必要があります。では、どうすれば経済が発展するのでしょうか?

農業の生産性向上のため新品種を推奨する、道路や橋といったインフラを整備する、天然資源開発のため外資を導入する、国民の教育レベル向上のため学校建設を進める、市場を通じた民間活力を活用するため規制を緩和し民営化を進める、政治家や官僚の腐敗を追及する、法制度を改革してビジネス環境を整える、特に女性の起業家に小口融資を供与する等々、様々な提案が学会や政策サークルの議論を経て実行されてきました。それぞれが極めてもっともな提案であり、相応の効果を発揮してきたはずですが、中国のように劇的な変化をもたらした例は、今のところアフリカのサブサハラ地域には見られません。

途上国の側から見ると、多数の人間を一定の所得水準に短期間で引き上げるのは、当面やはり製造業以外には考えられないと思います。従って、サブサハラ地域で製造業を誘致・振興できれば、経済発展が急速に進むかもしれません。

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