「楽屋話っぽいバラエティ」の限界
TaiTan:なるほど。バラエティ番組のほうはどうなんですか? 芸人さんもSNSで楽屋話とかをどんどん発信してますけど、文脈は制作者が作りたいんだけどな、って思ったりします?
藤井:ものによるかな。別に裏で言ってほしくないこともそれほどないんだけど、そこは言わないでしょっていう信頼関係もあるし、番組を盛り上げるために発信してほしい場合もあるし。
佐藤:芸人さんはそういうラインはしっかり守れるよね。格闘家は守れないけど(笑)。
藤井:基本的にテレビ番組はチームプレイなので、格闘技のように戦って強いやつが偉いっていうものでもないですからね。
佐藤:苦味も旨味も、芸人さん本人のものになるでしょう。そういう意味では、好きにやらせたほうが今風かなと思う。
TaiTan:ネタバラシはしないにしても、それこそ最近は番組の中で芸人としての悩み相談をしたり、お互いの芸を褒め合ったり、本来は楽屋で話すようなことをばんばんしゃべっていて、僕なんかは見ていて「メタ過ぎない?」って思うんですけど。
藤井:そういうメタ的な番組も、見ている分には楽しいですけど、ちょっと数が多すぎるかなとは思いますね。内幕の話はあくまでおまけで、主軸は芸だったり番組独自の企画のほうにあるわけじゃないですか。制作者としては、本来そっちを更新していかなきゃいけないのに、テレビの主流が楽屋話になっていくのは、さすがにバランス悪いなと。
――いまや芸を披露するよりも、芸について語っている時間のほうが長い芸人さんいると思いますよ。
藤井:深夜のラジオ番組で話すくらいならいいとして、いま地上波でも普通にやってますからね。
TaiTan:もはや楽屋ポルノみたいになってるなと、正直思います。裏側の過剰供給というか。
藤井:でも揺り戻しは来ると思いますよ。ここまで数が増えた以上、必ず収束するはずなので。
佐藤:でもTaiTanはラジオ好きだから、ノリとしては好きなんじゃないの?
TaiTan:ラジオは大好きですけど、ラジオのいわゆる部室ノリ的なものは好きじゃないんですよ。リスナーと共犯関係を結んで、「ほんとお前らはさぁ……」みたいな内輪っぽい感じは正直きついんですよね(笑)。
藤井:内幕にしろ、後日談にしろ、裏側を語ることに終始するのはちょっと安易だとは思いますよね。
TaiTan:「文春砲」を食らった霜降り明星のせいやさんが、直後の『霜降り明星のオールナイトニッポン』の生放送で、ひたすら2時間ネタをやったじゃないですか。ああいうスタイルのほうがずっと意味あるし、単純に僕は好きですし、かっこいいですよね。
藤井:あれは霜降り明星が格の違いを見せつけましたね。いい放送だった。
〈取材・構成/おぐらりゅうじ 写真/西崎進也〉
第3回:朝倉未来の人気が途絶えないワケ…格闘技は「天才子役」から「リアルヤンキー」の時代へ
東京都出身、映像作家。総合格闘技イベント「PRIDE」ではチーフディレクターとして選手紹介映像、いわゆる「煽りV」の制作を手がけた。現在は株式会社佐藤映像代表、「RIZIN」で演出統括を務める
東京都出身、2003年にTBS入社。『リンカーン』『ひみつの嵐ちゃん! 』などのディレクターを経て『クイズ☆タレント名鑑』『テベ・コンヒーロ』等を演出・プロデュース。2016年には『悪意とこだわりの演出術』(双葉社)を出版。現在は『水曜日のダウンタウン』『クイズ☆正解は一年後』『オールスター後夜祭』などの演出を手掛ける
「Dos Monos」のラッパーとして2018年にアメリカのレーベル「Deathbomb Arc」と契約、3枚のアルバムをリリース。2022年1月にはvolvox incを共同創業。音楽のみならず幅広い領域の企画を手がけ、過去には、クリエイティブディレクターとして無料の雑誌『magazine2』やテレ東停波帯ジャック作品『蓋』などをプロデュースした。
Twitter:@tai_tan Instagram:@tai_____tan

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