中国・人民元が「ドルの一人勝ち」を崩す日はやってくるのか?

経済規模や貿易量だけでは決まらない
宮崎 成人 プロフィール

人民元、基軸通貨への遠い道のり

まず、経済規模ですが、民間シンクタンクの多くは2030年までに中国が世界最大の経済大国になると予測しています。これはたしかに大きな変化ですが、経済規模や貿易量だけが準備通貨の地位を決めるわけではありません。

中国の金融市場は規制緩和が続いているとはいえ、依然として国境を越えた自由な資本移動が確保されてはいません。金融市場の透明性にも課題があり、人民元を保有する外国人(非居住者)が、元を安心して運用する手段は限定的でしょう。インフレで価値が毀損されるリスクは低いように思われる一方、上場している民間企業にも党や政府が突然指示を出す場合がある等、海外投資家には不安を与えかねません。もちろん、ネットワーク外部性をもたらすほど人民元が既に広く用いられているわけではありません。従って、中国と深い貿易関係にある周辺国や、政治的に米国と距離を置きたい国々を除き、外貨準備に占める人民元の割合を増加させていくメリットは、まだ感じられないでしょう。

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もし中国当局が元の基軸通貨化を狙うのであれば、金融市場の規制や党・政府の経済への介入など多くの改革が必要です。デジタル人民元の導入が、その第一歩になるかもしれませんが、それでもドルの基軸通貨の地位は長期間揺るがないでしょう。

 

しかし、ドルの地位が絶対安泰とも言えません。それは、逆説的ですが、米国が敵対する国や集団に対してのみならず、友好国の企業や金融機関に対しても、金融制裁や罰金等を積極的に課すようになったためです。米国の法律の強制力は原則として国外には及ばないはずですが、ドルという米国のナショナルカレンシーを用いた取引の決済は最終的に米国の金融機関が関わるため、それを理由に事実上国外にまで米国法の管轄を広げているのです。そのような状況では、テロリストや犯罪者だけでなく、普通のビジネスに従事する主体もリスク回避のためにドル以外の通貨を用いようという誘因を持ちかねません。一部の国が外貨準備をドルからシフトして、結果として世界の外貨準備に占めるドルのシェアは徐々に下がっていますが、その背景にもこうしたリスク回避の考慮があるのかもしれません。ここにも、ナショナルカレンシーであり同時に国際決済通貨であるというドルの両義性が現われています。

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