ドマイナー競技・フェンシングはこうして「カネのなる木」になった

みんな唖然とした驚愕の経営術を明かす

なんてわかりづらい競技

2008年の北京オリンピックまで、フェンシングに注目する日本人は皆無に等しかった。太田雄貴選手が銀メダル(個人)を獲得すると、闘剣士によるエキサイティングな競技内容に人気が集まる。太田選手は2012年のロンドンオリンピックでも銀メダル(団体)を獲得し、マイナー競技は一気にメジャー競技へと変身した。

このほど新著『チーム・イノベーション ヒト・カネ・モノのない組織の立て直し方』(徳間書店)を上梓した宮脇信介氏は、フェンシング人気を牽引してきた立役者だ。東京大学経済学部を卒業後、カリフォルニア大学バークレー校でMBA(経営学修士号)を取得する。日本興業銀行や外資系運用会社で活躍する中、北京オリンピック後の2014年6月に、日本フェンシング協会常務理事に就任した。

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遠征や練習にかかる多額の資金を確保し、どうすればフェンシングを「食える競技」「儲かる競技」として盛り立てられるのか。現役を引退した太田雄貴氏が、2017年8月に日本フェンシング協会会長に就任する。そのとき、宮脇氏は太田会長の依頼を受け専務理事に就任し、手を携えてフェンシング界の大胆な経営改革に取り組んだ。本書には、その軌跡とノウハウが惜しみなく記されている。スポーツとは縁がないビジネスパーソンにも役立つ、普遍的なビジネス書だ。

フェンシングが長らくマイナー競技に甘んじてきた最大の理由は「わかりづらい」ということだ。そこで太田会長と宮脇氏は「大会を魅力的なショーケースとしてプロデュースしよう」と考え、「競技の見せ方」を工夫した。

〈剣の攻防が速く、どちらがどのように剣を動かしてどこを突いたのかわからない。観戦競技として致命的な課題を克服すべく、太田氏は多くのテクノロジーを用いた。〉

〈ポイントを取ったときには、客席にまで設置されたLEDが点灯し、視覚から大きな入力を受けるとともに、空間を震わす大きな効果音が聴覚のみならず、空気の振動となって体を直接的に震わせる。〉『チーム・イノベーション』72〜73ページ)

顔面をすっぽり覆うマスクを着用するため、競技者の表情がまったく見えないことも、フェンシングがマイナー競技であり続けた大きな理由だ。

〈心拍数をリアルタイムで表示することで、選手もこれだけ苦しいんだ、緊張しているんだ、とよりわかりやすく伝えるための策を講じた。〉(同書73〜74ページ)

こうした工夫をするだけで、フェンシング全日本大会の来場者は年々増えていく。2019年には、強気の価格設定であるプレミアムシート(3万円)や2日間通し券(1万2,000円)を販売し、2日間で約3,200人の動員を実現した。観客(顧客)が今何を求めているか想像力をめぐらせて工夫を施せば、今まで食えなかったビジネスが「カネの成る木」に生まれ変わるのだ。

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