50億年後に待ち受ける太陽と地球の運命──膨らむ太陽から地球は逃げ切れるか

『時間の終わりまで』読みどころ【7】

世界的ベストセラー『エレガントな宇宙』著者ブライアン・グリーンによる新作『時間の終わりまで』から本文の一部を紹介するシリーズ第7回。

なぜ物質が生まれ、生命が誕生し、私たちが存在するのか。膨張を続ける「進化する宇宙」は、私たちをどこへ連れてゆくのか。時間の始まりであるビッグバンから、時間の終わりである宇宙の終焉までを壮大なスケールで描き出し、このもっとも根源的な問いに答えていく本書から今回紹介するのは、太陽と地球の未来。

宇宙の時間をエンパイアステートビルにたとえたら

未来を考えるときには、どんな区切りを入れればいいだろう?

日常的な時間スケールなら、当然ながら人間の直観が役に立つが、宇宙論にとって重要な時代区分を見ていくとなれば、扱う時間はとてつもなく長くなるため、どれほど巧妙なアナロジーを使っても、その長さを伝えるのは難しい。

結局、そんな不慣れな山登りの足がかりにするには、おなじみのアナロジーが一番だろう。宇宙の年表が、エンパイアステートビルの高さに伸びていると想像してほしい。ビルのそれぞれの階が、時間の長さを表す。ある階が表す時間の長さは、そのすぐ下の階が表すそれの10倍だとしよう。エンパイアステートビルの1階は、ビッグバンに続く10年間を表し、2階はその後に続く100年間、3階はさらにその後の1000年間となる。

今示した数値からわかるように、上階に行けば行くほど、その階が表す時間は急激に長くなる──口で言うのは簡単だが、これを勘違いせずに理解するのは難しい。たとえば、12階のフロアから13階のフロアまで階段を使って上ることは、ビッグバンの1兆年後から10兆年後までの宇宙を考えることに相当する。その1階分の階段を上ることが9兆年に相当し、11階より下の各階の持続時間をすべて合わせた時間よりもずっと長い。

それと同じことが、さらに上階に向かうときにも成り立つ。それぞれの階に相当する時間の長さは、それ以下の階に相当する時間の長さをすべて足し算したものよりもはるかに長い。階をひとつ上がるごとに、まさしく幾何級数的に長くなるのだ。

人間の一生はおよそ100年、長持ちする帝国の寿命は1000年、丈夫な生物種なら数百万年ほど続くが、時間のエンパイアステートビルの高層階が表す時間の長さは、それらとはまったく異質だ。その長さたるや、永遠のように思われるほどだ。

エンパイアステートビルの86階にある展望デッキにたどり着いたとき、われわれはビッグバンから10⁸⁶年後の世界にいることになる──それを普通の表記で書き直せば100000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000年となり、人間のどんな企てに関係するいかなる時間の長さもそれに比べれば一瞬にすぎないような、まさに目もくらむほどの長さだ。

しかし、86階に相当する時間に0がいくつ続こうと、このビルの最上階である102階に足を踏み入れるとき、86階によって表せる時間の長さは、ビルの最後の階段の踏み板に塗られているペンキの厚みに対応する時間よりはるかに短いのだ。

【写真】エンパイヤステートビルphoto by gettyimages

今日、ビッグバンからざっと138億年が経っている。つまり、ここまでの出来事のすべては、時間のエンパイアステートビルの1階と、10階からさらに階段を上りはじめて数段目までに起こったことだ。その地点から、われわれは幾何級数的に遠い未来に向かうことになる。

さあ、上りはじめるとしよう。

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