「さみしがり屋」な配達員のために…
ラストワンマイルで働く人は、どんな人たちなのか。
「さみしがり屋が多いですね」
意外な言葉が返ってきた。
「この仕事を始める前までは、配達員には孤独が好きな人が多いと思ったんです。だけど、実際に話してみると、さみしがり屋な人ばかりでした。声をかければ、喜んでいろいろ話してくれるし、普段は無口な人でも、話し始めれば止まらない人も多くいます」
しかし、現状、集荷から配送まで、1日を通して人と話す機会がほとんどない職場である。常に時間に追われているので、ゆっくり同業者と会話をする時間もない。
「配達の時の困りごとや、新しい配送の仕事の探し方など、ドライバー同士が情報共有をすれば、もっと物流業界はよくなるはずなんです。だけど、配達員のほとんどは個人事業主ですから、誰に相談すればいいのか分からず、悩みごとや困りごとを一人で抱え込んでしまう人が多いんです」
その後、濱田さんは配送業務の請負期間を満了して、自社で水産物やデリバリーの配送請負事業を展開しつつ、個人事業主の軽貨物運送ドライバー経験や自社で運送事業を展開する経験を元に「ドラトーク」という軽貨物の配達員専門のコミュニティアプリを立ち上げた。ラストワンマイルのドライバーの孤独を、少しでも和らげられるサービスが物流業界には必要だと思った。
アプリを立ち上げて1年。ドラトークにはさまざまなコメントが寄せられている。
「月曜日に配達頼める人いませんか?」
「腰痛に悩んでいる人は、運転席に座椅子を置くのがおすすめですよ」
「スタッドレスタイヤに交換完了!」
求人の話や配達のワンポイントアドバイス、「これから配達行ってきます」「配達行くの嫌だなぁ」という、たわいもない一言など、同業者が共感できるコメントが投稿されている。
「軽貨物の配達員が、思ったことを発言できる場になればと思っています。さみしさを埋められるアプリになれば、最終的にはドライバーたちを孤立から助けられるサービスになるのではないかと思います」
ラストワンマイルで働くドライバーたちは、私たちの見えないところで孤独と戦っている。お客から怒られる日もあれば、相手からは感謝の言葉ももらえず、荷物をそっと玄関に置いてくる日もある。
それでも、「お疲れ様」と思いやりのある言葉をかけられれば、彼らはその言葉をエネルギーにして、走り続けることができる。
荷物を配達しているのが「人」である以上、私たちも荷物を受け取る「人」として、最低限の礼儀を持たなくてはいけない。そのような心構えをほんの少し持つだけで、人が人を思いやれる、住み心地のいい社会になっていくのではないだろうか。