テスラもスペースXも…イーロン・マスクが手がけるビジネスの「意外な共通性」

「SF的な未来」の方を向いている?
池田 純一 プロフィール

マスクの会社では、新しいブレイクスルーとなるアイデアを思いつきながらも、それを既存の業界構造の中では実現できず、せっかくの能力を持て余している研究者やエンジニアをかき集めるところから始める。実際、航空宇宙産業にしても自動車産業にしても、ともに規模が大きい成熟産業であるため、内部にそのように燻っているエンジニアがいてもおかしくはない。

そのようなエンジニアたちが新たに身を寄せる場所を作ったのがマスクだった。その分、内部の士気は高く活気がある。

世界一の難題に真剣に取り組むと公言すれば、世界一の研究者や技術者がおのずから近づいてくる。そうして本当に難題が解決されていく。まさに海賊のクルー集めのようなものだ。

そうした様子は、たとえばSpaceXを使って民間人が宇宙空間に向かう「インスピレーション4」というプロジェクトを扱った、『宇宙へのカウントダウン』というNetflixのドキュメンタリーを見るとよくわかる。SpaceXの20代の若い社員が、自信をもって次々と責任を伴うプロフェッショナルな仕事をこなしているところを見ると強くそう感じる。むしろ、あるタイミングでマスクは「会社という器を作ることの心理的な効果」に気づいてしまったのかもしれない。

Netflix 公式サイトより
 

理想とするのは、社会主義者が描くユートピア

ジャック・ドーシーのように、マスクの他にも、シリアル・アントレプレナーとしての成功者はいるが、しかし、多くの場合は、最初に成功した業界から大きくは飛躍しない。ITで成功したら次もITとなりがちだ。

しかし、マスクの場合は、物理的存在を扱う事業に立て続けに着手している。さらには近年、拠点をカリフォルニアからテキサスに移しつつあり、そうした点からも彼はシリコンバレーの起業文化という枠組みを飛び越え始めている。

その意味では、もはやシリコンバレーという括りでアメリカのテクノロジー企業を語るのも適切ではない時代に入りつつあるといえる。宇宙開発でマスクとしのぎを削る相手であるジェフ・ベゾスが、Amazonの本社をシアトルに構えていたことも「シリコンバレーの外部」という点でシンクロしていて興味深い。彼らは、あくまでも起業家であって投資家ではないということだ。

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