フランスで「日本を特集する雑誌」が大人気になっている理由

即身仏から女子プロレスまで
柳下 雄太 プロフィール

もちろん成功する保証なんかありませんよ。これは賭けでした。僕自身メディア業界に精通している訳ではなかったので、2018年にすでに別の雑誌で仕事をしていた友人にこんな雑誌を作りたいと相談したのですが、フランスのメディア業界の景気はいいとは言えないので、「日本専門誌を立ち上げるなんて君は正気か」と言われましたよ(笑)。

僕がやりたかったのは、既存のフランスメディアがあまり取り上げない、現代の日本の諸問題――つまり等身大の日本ですね――そういうものを扱う雑誌作りです。そうすると、フェミニズムとか働き方の問題であるとか、フランス人の読者にも関係するテーマが出てくるわけです。こういった普遍的な問題に対して、日本の話を扱いながらフランスの現状に対し新しい視点を提示できればという思いもありました。

外国でこれらの問題がどうなっているのか、知りたいという読者はいますから。つまりこの場合日本というのは、ある種の鏡なわけです。この鏡を見ることによって、フランスでは当たり前になっていて特に疑問に思わないことについて、「果たしてこれはこれでいいのだろうとか」と、頭を働かせることができる。

TEMPURA 5号の表紙
 

例えばフランスでは男性間で衣服ですとかアクセサリーを褒めることはあまりないのですが、これは着る物に気を使うのは男らしくないという古い考えがどこかにあるからです。これに対し、日本では男性が同性の友人の服を褒めるのはごく普通のことです。両国間の差異によって、当たり前になっていて普段は気づかない自分たちの無意識の傾向が顕になるのです。

なのでTEMPURAのコンセプトとしては、たとえ日本の社会問題であっても、他の国の読者にも関わってくる普遍的なテーマを扱うことにしています。

これと同時に、ビジュアルの面でも読者にアピールするため、写真も自分たちで選んだアーティストを使ってしっかりしたものを載せることを心がけています。優秀な記者を使って真面目なテーマを扱いながら、装幀もきちんとしたかっこいい雑誌を作ろうというのが当初の目的でした。

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