閉ざされた村で5人の女性を次々と惨殺…「内臓をえぐり取った男」の「本当の狙い」

穂積 昭雪 プロフィール

同年8月13日夜11時ごろ、村の32歳の女性が夜道で後ろからやってきた謎の男に手拭いで首を絞められた。「このままでは殺される」と身の危険を感じた女性は隙を見て力いっぱい相手の睾丸を握り絞めた。男は「ギャ!」とのけぞり手拭いを放した。女性は一瞬、月明かりに照らされた男の顔を見逃さなかった。

「あっ! お前は水車小屋の勝太郎!」

名前を叫ばれると、男はその場から逃げ出すように立ち去った。

翌日、連続肝取り事件の犯人として、水車小屋を営む馬場勝太郎が警察に逮捕された。

〔PHOTO〕iStock
 

「肝取り勝太郎」こと「馬場勝太郎」は、明治11(1887)年生まれの30歳。元々この土地の生まれではなく10年ほど前に辰野へやってきて酒屋に勤めた後、独立して水車小屋の管理人へ転身。正直で働き者、妻も子供もいるという誰もが認める好青年であったのだ。

そのため、「勝太郎が肝取りの犯人だった」というニュースは勝太郎をよく知る人ほど信じられなかったようだ。

勝太郎が「肝取り」という恐ろしい商売に手を染めた理由は、ずばり金目的であり、彼は「大阪の商人」を名乗る50歳位の男性から「病気を治すため女の生肝が欲しい。どんな高値でも買うので調達して欲しい」と依頼されたためだという。

先述の通り、一部地域では人間の生き肝は結核や肺の病気を治すための薬として信じられていた。勝太郎は水車小屋の管理をしつつ長野を中心に薬の材料として女性の生き肝を集め、商人たちへ高値で売りさばいていたようだ。

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