しかし、「賃金引き上げありき」の分配政策にこだわり続ければ、日本企業が国際競争で不利な状況に置かれ、世界シェアを低下させていくという懸念が深まっていきます。その結果、かえって景気の悪化を招いてしまうというわけです。
コロナで疲弊する中小企業を壊滅させる
岸田首相は2022年の春季労使交渉(春闘)に向けて、経団連に対して3%の賃上げを求めています。
連合も定期昇給相当分と合わせて4%程度の賃上げを要求しています。連合の集計によれば、2020年の賃上げ率は1.90%、2021年は1.78%と2年連続で2%を下回っているだけに、岸田政権の方針を追い風にしたいようです。

ただし、勘違いをしてはいけないのは、連合に加盟する労働者は日本の全労働者のわずか12%台、連合加盟の労働組合を持つ大企業で働く労働者は全労働者の20%程度にすぎないということです(さらに企業数でいえば、大企業は全体のわずか0.3%にすぎません)。
当然のことながら、連合加盟の労働組合を持たない圧倒的大多数の中小零細企業の労働者は含まれていないので、たとえ春闘で3~4%の賃金上昇を勝ち取ったとしても、それは一部の大企業に限定されるといっても差し支えはないのです。