亡国の円安からの脱却を
これまで見たように、日本企業のビジネスモデルや生産性は、世界の水準から大きく遅れてしまった。時代の変化に応じてビジネスモデルを変革し、技術革新を行なうことができなかったのだ。
円安によって安易に利益が増加するために、日本企業が技術開発を怠ったためだ。この意味で、円安が日本の技術力向上を妨げたのだ。
ところで、GDPは1国が生産した付加価値の合計であり、その中での企業利益が占める比率は、国によってあまり大きな違いはない。他方で、株価は企業利益の将来の成長可能性を反映している。
だから、企業の時価総額の合計での日米の違いがGDPでの違いより大きくなるのは、将来の成長に対する期待が、アメリカ企業のほうが大きいからだ。つまり、アメリカの産業構造が全体として未来志向型のものになっているからだ。GAMMAがその典型だが、それ以外にも同様の企業が多数誕生している。
もちろん、株価に含まれている将来への期待が常に正しいとは限らない。事実、1990年頃の日本の株価の高騰はバブルによるものであって、その後に崩壊した。
現在のアメリカの株価に、コロナからの回復の期待に基づくバブル的要因があることは否定できない。
しかし、それを考慮したとしてもなおかつ、日本の株価が極めて低い水準にあることは間違いない。それは、日本企業が、未来に向かって発展する経済活動を行なっていないからである。