変わらぬ出演者へのリスペクト不足
次に問題なのは、視聴率獲得やストーリー性重視で、出演者へのリスペクトが感じられない扱い方。
たとえば、『ジョブチューン』のシェフとコンビニの開発担当者、『アイ・アム・冒険少年』の「脱出島」出演者は、今回の騒動で大きなダメージを負ってしまった。
さらに言えば、前述した『ピラミッド・ダービー』『クレイジージャーニー』『消えた天才』も、出演者へのリスペクトが足りず、視聴率やストーリー性を優先させた結果、「放送倫理違反」を招いてしまった。
TBS局員も、制作会社のスタッフも、優先しているのは出演者ではなく自分たち。「こういう編集で放送したら、出演者はどう思い、どんな影響を受けるか」と想像していないのだろう。

たとえば、『アイ・アム・冒険少年』の「脱出島」をガチンコで制作したら、「脱出できませんでした」という結末ばかりになるかもしれないが、作り手たちはそれをよしとせず、台本で思い描いたものを見せようとする。
今回の件だけでなく、かつての『クレイジージャーニー』も失敗を恐れたスタッフが野生の珍しい生物を事前に用意したことからも、それがわかるだろう。
古くからTBSのバラエティは必要以上にガチンコ感を売りにしたものが多く、だからスタッフが過剰演出に走りやすく、結果として出演者を傷つけた上に、「やらせ」と糾弾されるという負の連鎖を続けてきた。
しかし、TBSのバラエティで最も支持を集めている『水曜日のダウンタウン』は失敗を笑いに変えることでエンタメに昇華させ、視聴者の信頼を得ている。
こういう問題が報じられるたびに「演出とやらせの境界線」が取りざたされるが、『水曜日のダウンタウン』のように失敗を笑いに変え、エンタメ重視の姿勢を打ち出していけば、視聴者は多少の演出くらい好意的にスルーできるのだ。