いつもは「しきたり」とか「季節の行事」とは縁薄い、イマドキの生活を送っている人も「お正月くらいはちゃんとやらなきゃ」と思っている人は少なくない。暮れになると当然のように鏡餅やしめ縄、新年用のお花を買い込んで飾ったり、元旦の食卓用におせちやお雑煮を準備するのは、ハロウィンや節分、七夕などとは段違いにオフィシャルな行事という感覚が強いためだろう。しかも、無意識にちゃんとやらなくちゃモードになってしまう。

ところがお正月の「当たり前」の祝い方が、自分と他人では微妙に(ときにはかなり)異なっていることがある。友人知人との世間話なら「へー、そうなんだ(笑)」で済む話も、同棲や結婚したての初正月に、相手との「当たり前」が全く違って愕然としたり、その違いを巡って喧嘩に発展したりすることもある。

今回は、それぞれの家の「正月の風習」に、唖然とした話をライターの若尾淳子さんが取材で集めてくれた。

※以下、若尾さんの寄稿。

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大晦日にパンツの緊急買い出し

まず、僭越ながら私の話から始めたいと思う。
今ではすっかり手抜きになった正月の用意だが、結婚後初のお正月は、なぜか「ちゃんとしたお正月をやらなくちゃ」という強すぎる使命感に囚われていた。

あらかじめおせちを注文し、祝い箸やしめ縄、さらには「お雑煮用の塗りのお椀」なるものまで買い込んだ。私的には「正しいお正月」の準備が順調に進んでいたのだが、大晦日の夕方になって夫がソワソワし始めた。

「ねえ、新しいパンツ、買った?」という夫の言葉にハッとする。実家にいた頃は、大晦日の入浴後は新品の下着一式とパジャマが準備されていたのを思い出し、半泣きになった。私の実家も、夫の実家も新品の下着を身につけなければ新年は迎えられない、という同じ風習を持っていたが、うっかりしていた。このままじゃ当たり前の「正しいお正月」が迎えられないじゃないか! 

しまった!新しい下着を買い忘れた!と真っ青になった新婚の大晦日。写真はイメージです。photo/iStock

すでにほとんどのお店が閉まった大晦日の夜、私たちは必死で街を探し回り、ようやく見つけた閉店ギリギリの大型スーパーに飛び込んで、2人分の新品の下着をなんとか確保。今思うとバカみたいだけど、なんだかこれで「結婚した人間としての正月をちゃんと迎えられる」とふたりで心から安堵したのを覚えている。今となってはパンツごときになぜあんなにもこだわったのか、夫も私も首をひねるばかりだ。