文春砲『線虫がん検査「精度86%」は問題だらけ』があまりにお粗末と言える確固たる理由

木原 洋美 プロフィール

元社員は「動物の尿」に対するコメントを「人の尿」と証言

文春は広津代表に取材を行ったと書いているが、「お話しした内容はことごとく無視され、あのような記事になりました。最初から、正しい記事を書くつもりがなかったとしか思えない」とH社側は憤っている。以下は、元社員の告発に対するH社からの回答だ。

4. 広津代表が〈盲検化とか、ナンセンス〉とメールした?

記事では、広津代表が送ったという〈盲検化(ブラインド)とか、ナンセンスなことをしないでください〉と書かれたメールを示し、次のように述べている。

「それだけではない。広津代表の判断で、結果が陽性にも陰性にも変わることもある。別の元社員が言う。

「代表は検査員や研究員の検査を『上手い』、『下手』と表現します。正解率が高いデータは『上手い』と採用し、都合の悪いデータは『下手だ』と破棄していた。『上手い』検査員しか再現できないなら実用化するのは危険だと、実用化直前に訴えた社員もいましたが、聞き入れられませんでした」

――この記載については、以下の回答を得た。

「本メールは不当に持ち出された社内メールであり、全体の一部分だけが意図的に切り抜かれ記載されております。同メールを代表広津が同社研究員へ送信したことは事実です。しかし、その背景情報は記事と大きく異なっており、動物の尿に対するごく早期の基礎研究結果に対するコメントとしてのものでした。従って、記事にあるような実用化に向けた精度向上が上手くいかなかった憤りとは全く関係がなく、当該記事の文脈は現実から大きく乖離しています。全く異なる事項を混同して記述することで、この一連の文章はあたかも代表広津が臨床研究上必要なブラインド試験にさえ批判的であるという、間違った印象を読者へ与えようとしています。

むしろ弊社は、すでに大阪大学と二重盲検試験を実施し、その成果は学術論文として採録されております」(H社からの回答)

5.陽性率もコントロール?

「陽性率もコントロールしている。今年1月に作成された「判定ルール」を見てみると、〈陽性率15%以内〉との記載がある。

「なぜ最初から陽性率を15%以内と決めるのか。本来、被験者から送られて来る尿検体によって、陽性率は変わるはず」(H社関係者)

今夏、岡山県倉敷市の病院がH社の精度を確かめるため、20人分のがん患者の尿を送付した。しかし戻ってきた結果を見てみると、3人分しか、がん患者と特定できていないことが分かったのだ。20人のちょうど15%にあたる」

――この記載についても確認してみた。

「記事内で陽性率15%以内と指摘されておりますが、これは通常のルーチンワークにおいて、システム内の正常性をチェックするエラー検出条件の1つでした。(中略)このアルゴリズムは、所定数の検体における結果が極端な傾向を示した場合、検査システムのエラーを疑ってアラートを発するよう設定されておりました。これらのアラートが発生した場合、システムは該当した検体すべてを再検査に回すよう設計されておりました。(中略)

つまり、想定を極端に外れた場合は、正しく計測できません。これが当該病院で起こったことでした。(中略)このことは、当該病院に説明し、2021年8月に説明文書をリリースしております」(H社の回答)

 

意味が掴みにくいかもしれない。要するにN-NOSEの判定システムは、通常ではありえない“陽性率100%”のような数値が出た際にはエラーと検出するようプログラミングされており、正しい計測ができなくなってしまったということだ。この件については8月、H社は医療機関に対して「臨床研究以外での集団陽性者検体提出禁止のお願い」と題する通知を配信し、同時に、システムエラーが影響を与えた可能性がある受検者に対しては再度計算を行った上で、正しい検査結果を送ると発表している。隠ぺい工作など全然していないのだ。

関連記事