文春砲『線虫がん検査「精度86%」は問題だらけ』があまりにお粗末と言える確固たる理由

木原 洋美 プロフィール

病院の画像診断よりも線虫を信頼する患者は実在するのか?

2.病院の診断よりもN-NOSEを信じる?

「その方は『線虫がん検査で健康と判定されたので治療を受けません!』と拒否したため、担当医も困惑。その逆で、線虫検査でがんと判定され、『全身を検査して欲しい』と、数カ月間不安を抱えたまま検診を受ける人もいます」

――これは、ある大学病院の医師のコメントだそうだが、信じがたい。というのも、治療を拒否する患者の存在が、あまりにも不自然だからだ。大学病院は特定機能病院なので、原則として医療機関からの紹介状がなければ受診できない。紹介状を持参するということは、大学病院を受診する前にがんに詳しい医療機関に行って画像診断を受け、がんの可能性が高いとの診断をくだされているということだ。その上で、自らの意思で大学病院を受診しているはずなのに「治療を拒否」とは、わけがわからない。

ましてN-NOSEは、がんの一次スクリーニング検査を担う技術として開発されたもので、健康であると保証するものでも、がんを判定するものでもない。

そもそもがんの確定診断は、組織診(生検)といって組織の一部を採取し、病理診断医が顕微鏡で観察することでやっと判明する。CTやMRIですら、完璧ではないのだ。そのことを、この原稿を書いた記者は分かっているのだろうか。

 

3.線虫を手作業でカウント?

「検査方法はこうだ。寒天を敷いたシャーレの左側に薄めた尿を置き、真ん中に線虫を50匹程度置く。するとがん患者の尿には、線虫が寄っていくとされる。麻酔で線虫の動きを緩くし、検査員がカウンターを使って手作業で線虫の数をカウント。左右に分かれた線虫の数を比べ、がんか否かの判定をする」

――年間10万件以上もの検査は、「手作業」では不可能だ。自動測定装置の開発はだいぶ前から進められており、N-NOSEが事業化された時点で当然完成し、導入済である。

しかも記事の後半で、「20年10月には商品化がスタート。検査のオートメーション化も始まった」とさらっと述べている。「手作業でカウント」の説明は必要なのだろうか。

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