文春砲『線虫がん検査「精度86%」は問題だらけ』があまりにお粗末と言える確固たる理由

木原 洋美 プロフィール

元社員なる人物

また文春の記事では、元社員なる人物が登場し、あたかも広津代表が家内制手工業のように一々手作業で検査を行い、結果を恣意的にコントロールしているかのように記載しているが、そんな不正がまかり通るほど、世の中は甘くない。まして昨年の実用化以来、検査を受けた人の数は10万人を超えており、そこには多くの医療機関も絡んでいる。

さらにN-NOSEを検証している研究機関はH社だけではない。前述の研究拠点に加え、イタリアの研究機関も乳がんに関して解析を行い、86.11%の精度で識別できると報告したことが英国の権威ある科学誌『ネイチャー』の姉妹誌『サイエンティフィック・リポーツ』に掲載されている。

広津氏 photo by gettyimages

「一見するとがん患者を陽性と判定出来ており、良い検査のように思えますが、感度・特異度はセットで見る必要があります。(中略)つまりこの検査では、がん患者でも健常者でも、とにかく陽性だと判定しているに過ぎない」(元社員)とする記事を信じるなら、イタリアの研究機関にも広津社長が赴き、検証結果に与えていることになる。

以降、記事に沿った形で、筆者の意見と疑問を述べてみたい。

1.「がんではない」と判定された?

「昨年秋、線虫がん検査を受けると、がんではないと判定されました。たまたま同時期に受けた健康診断で、乳がんのステージIと診断されたため入院しましたが、線虫がん検査を信じていたらと思うと恐ろしい」

――これは、「N-NOSE」を受けた女性のコメントだが、首を傾げざるを得ない。そもそもN-NOSEは「精度100%」とは謳っていないし、検査結果でも「がんではない」といった断定的な表現はしていない。がんがある可能性を低リスクから高リスクまで色分けしたチャートで示し、受検者のポジションを星印でマーキング。安心圏内の場合は「今回のがん検査ではがんリスクは検出されませんでした。今後も定期的に検査を受けましょう」にチェックが入り、逆にハイリスクの場合には「専門医による検査、診療を受けることをお勧めします」にチェックが入る。

 

ただし、仮に安心圏内だとしても、ギリギリセーフの位置にマーキングされているのを見たら、「念のため、がん検診を受けてみよう」という動機付けにはなる。実際、ハイリスクではなかった場合でも、星印の位置を見て念のため検診を受け、早期発見につなげている人もいる。判定はしないまでも、客観的な判断材料としては役に立つデータを提供してくれるのがN-NOSEなのだが、コメントの女性のリスクは一体どのあたりだったのだろう。

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