文春砲『線虫がん検査「精度86%」は問題だらけ』があまりにお粗末と言える確固たる理由

受験シーズンが到来しているが、もしも〇×式のテストで、〇の割合を15%以内と決めて回答したとして、合格できる可能性はどれほどあるだろう。まして受験者も採点者も大勢いる状況で、合格点を出し続けられるものなのか。――がんの匂いを嗅ぎ分ける線虫の能力を利用する画期的ながん検査「N‐NOSE(エヌノーズ)」について、週刊文春がつきつけた「問題だらけ」とする中身は、そんな不可能を可能と決めつける実に不思議なものだった。

東大、都立駒込病院、阪大も共同研究先

去る12月8日、「線虫がん検査「精度86%」は問題だらけ 「尿一滴でわかる」で話題」と題して週刊文春2021年12月16日号(以下文春)に掲載された記事に困惑した。筆者は「九州大学が、線虫にがんを非常に高い精度で嗅ぎ分ける能力があることを発見した」と報じられた2015年から線虫がん検査に注目し、研究開発が進展する都度レポートしてきたからだ。

週刊文春2021年12月16日号

この検査がいかに多くの病院や医師、研究者の協力を得て開発されてきたかもよく知っている。東京大学、筑波大学附属病院のほかにも、「がんと闘う病院」として名高い都立駒込病院や、西日本のがん医療を牽引する大阪大学も共同研究先だ。

もしも、文春が言うように「問題だらけ」だとしたら、これらの錚々たる医療機関が共同研究に応じてくれるだろうか。そんなことがまかり通るほど、日本の医療機関は間抜けなのだろか。

線虫がん検査を実用化するには、できるだけ多くの人の尿について線虫の反応を調べ、検査が本当に役立つのかを見極める「臨床試験」が不可欠だ。共同研究病院を見つけ、実施するには通常、膨大な労力と資金を必要とする。医薬品や食品の臨床試験を、書類作成や医療機関とのマッチング、データ解析などを請け負うことで支援する企業もあるほどだ。

 

当初、臨床試験の仕組みを知らず、かといって資金力も乏しかったベンチャー企業・HIROTSUバイオサイエンス(以下、H社)の広津崇亮(ひろつたかあき)代表は、全国各地で講演会を開き「共同研究をしたいので、一緒にやってくれませんか」と頭を下げ、協力病院を募る作戦に出た。それも協力金無しの「0円」で。

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