白杖を使って生活している弱視の女の子と、顔に傷がありなかなか定職に就けないでいる若者の二人、どちらも社会的にそんなに強い立場にはいない。自分の生きる場所をきちんと確保するのに懸命であり、その途上で出会った二人の恋愛はあまり急激に進展しない。
互いに遠慮があった。その距離感がこのドラマの魅力だったが、だから恋愛の進みぐあいは、やや、もどかしい。
社会の「制約」はないけれど
かつての「恋愛物語」は(だいたい昭和をイメージしている)、男と女は強く惹かれ合っているのに、さまざまな障害があり、行き違い、それぞれの強いおもいはつのるばかりというのが定番であった。19世紀の小説もそうなのだけど。
個人に対して社会の存在が大きかったということだろう。
でもいまどきは、社会の制約がそこまで大きくない。
19歳になったら戦地へ駆り出されるという過酷さもなく、「家」の存続のためにそれまで会ったこともなかった相手といきなり結婚させられる理不尽なこともあまり起こらない。
だから21世紀のいまどき、恋愛の進展を邪魔するものは、外側ではないようなのだ。
当人たちの「迷い」が恋の進展を阻んでいる。
外的要因もいくつか用意されているが、あくまでそれは側面であり、いまどきのドラマは、主人公たちが「相手のことを慮って距離を置く」ため恋愛が進まなくなる、そういう型が好まれているようだ。
それにはピュアさが必要なのだろう。