「ジェンダーレス男子」の先駆けとして、90年代に流行った「フェミ男」。フェミニンなファッションを身にまとう男性を意味する言葉だ。その代表格だったのが、俳優でサックスプレイヤーの武田真治さん。当時、武田さん自身は「フェミ男」として見られることをどう捉えていたのか。

インタビュー前編【忌野清志郎、井岡弘樹…武田真治の壊れかけた心と体を支えた大切な人の言葉】に続く後編では、当時を振り返ってもらいながら、人気バラエティの「めちゃめちゃイケてる!」(フジテレビ系)や『みんなで筋肉体操』(NHK)など、時代によって変幻自在の魅力を見せる武田さんの本質に迫った。

武田真治さん/『上には上がいる。中には自分しかいない。』より
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「フェミ男」と呼ばれていた時代の葛藤

――90年代の「フェミ男」から出発して「筋肉体操」の現在があり、そしてドラマ『凪のお暇』では女性らしいスナックのママ役を演じるなど、ジェンダーを超越して活躍してきたという印象があります。「男らしさ」「女らしさ」についてはどのように感じていますか。

武田:受け手の捉え方によると思います。自分では「世間の人たちはこういうものを求めているのではないか」と狙って演じたり行動したりすることはありません。

今でこそ海外のハイブランドでも男性向けに XS などの小さいサイズが販売されていますが、90年代はTシャツ+ジーンズがもてはやされる時代で、小柄な日本人の体形に合った男性の小さなサイズがなかったんですね。それでレディースサイズを着ていたら、まるでファッションアイコンのように扱われるようになったんです

すると、「もっとこの子をフェミニンに見せたい」と考えるカメラマン、アートディレクター、メイクさんが登場して、どんどん「フェミ男」が作り上げられ、独り歩きしていったという感じですね。

そういう意味では「フェミ男」は他人事でした。なので、今は体を鍛えて『みんなで筋肉体操』(NHK)に出演していますが、「女らしさ」から「男らしさ」に移行したという意識はありません。役についても「男らしさ」「女らしさ」を過剰に意識したことはないです。台本の役柄の設定に従って演じてきました。

様々な価値観の人がいるので、受け取り方も様々です。ある人に取って「男らしい」ことが他の人にとってはそうでもないかもしれない。例えば筋トレを“女々しい行為”と捉える人も実際います。なので特別に「ジェンダー」を意識して情報発信したり、演じたりということはないですね。

――武田さんはその時代その時代に与えられた役や役割を自分のものにしていて、変幻自在ですね。

武田:そうおっしゃっていただけるのは表現者として嬉しいです。でも一方で、変わらないものを提供し続けられる俳優やタレントさんもいます。それが、ごく一部の「スター」と呼ばれる人なのではないかと。そして、残念ながら僕はスターではなかった。前もってしっかり準備をして、「与えられた役」を全うして初めて居場所を得るというタイプの表現者だと思っています。