1%の富裕層が支配する“アメリカン・ドリーム”移民たちの「格差と貧困」の実態

『わたしのアメリカンドリーム』
佐藤 大介 プロフィール

弱者がさらに弱者をたたく

物語の中で、モーテルの主人はミアと両親を苦しめる強欲な人物として描かれている。カネの亡者であることに間違いはないだろうが、主人はヤンという名前で、彼もまた移民であることがわかる。

ヤンも「アメリカン・ドリーム」を胸に米国へと渡ったのだが、差別と貧困に苦しみ、いつしかカネしか信用しない人間になったのかもしれない。

ヤンの強欲な姿を通して描かれる、「弱いものがさらに弱いものをたたく」という構図に、ブル―ハーツの名曲「TRAIN-TRAIN」の一節が重なった。

「移民問題」は日本にとっても大きな課題

『わたしのアメリカンドリーム』は、移民の子どもという視点から、米国で生き抜くことの希望と困難を書き記している。

だが、これは決して海を越えた遠い国の話ではない。

 

外国人の労働者が増え、外国籍の人たちが多くなっていく日本にとっても、さまざまなルーツを持つ人たちとの共存が大きな課題となる。

ミアの投げかけた疑問は、私たちへの問いかけでもあるのだ。(了)

わたしのアメリカンドリーム(ケリー・ヤン:著 田中奈津子:訳)わたしのアメリカンドリーム(ケリー・ヤン:著 田中奈津子:訳)
ミアには秘密がある――。移民としてアメリカで厳しい生活をしている、5年生のミアとその家族。アジア系移民や黒人をめぐるリアルな姿が描かれる、新しい移民の物語。

『わたしのアメリカンドリーム』著者 ケリー・ヤン:児童文学作家。中国からの移民として、カリフォルニア州で育つ。小さい頃は本の内容と同じく、モーテルで働いていたが、13歳で大学に進学し、カリフォルニア大学バークレー校とハーバード大学ロースクールを卒業する。アジアやアメリカの子どもたちに書き方やディベートを教える、ケリーヤンプロジェクトの創始者。主な作品に『Three Keys』など。

関連記事