1%の富裕層が支配する“アメリカン・ドリーム”移民たちの「格差と貧困」の実態

『わたしのアメリカンドリーム』
佐藤 大介 プロフィール

「アメリカン・ドリーム」が抱える矛盾

米大陸という「未開の地」で安住の地をつくろうと人々は開拓に勤しんだが、先住民族たちの権利は完全に無視された。

「誰もが幸福を追求できる」と謳われた「アメリカン・ドリーム」の思想に先住民族たちは含まれず、その「幸福」とは開拓者による一方的で独善的なものにすぎなかったのだ。

そうした事実に向き合うと、ミアが感じた矛盾にも説明がつく。

「アメリカン・ドリーム」というレースに加わるには、人種や貧富によって配られる参加チケットに大きな差があり、一度チケットをもらい損ねると、手に入れるのはさらに難しくなる。

 

「アメリカン・ドリーム」を体感できる指定席はなかなか空きがなくて、多くの人たちにとっては「見果てぬ夢」にしかすぎない。

物語では、ミアが持ち前の利発さと行動力で苦境を逆転し、新しい未来をつかもうとする姿が描かれている。

それはまさに、個人の才能と努力によって、よりよい生活が得られるとする「アメリカン・ドリーム」そのものであり、貧しさにあえぐ人々にとっては希望に満ちたストーリーかもしれない。

年功や勤続年数よりも、実力やコミュニケーション能力によって昇進できる米国社会を映し出しているとも言えるだろう。

1%の富裕層と、苦境に立たされる残りの99%

だが、たとえミアが「アメリカン・ドリーム」に少しだけ手を伸ばすことができたとしても、独善的な思想や機会の不平等という現実は揺るがない。

2011年にはニューヨークのマンハッタンで、若者たちが「ウォール街を占領せよ」というキャンペーンを展開した。

Occupy Wall Street (ウォール街を占拠せよ)キャンペーンの様子 Photo by gettyimagesOccupy Wall Street (ウォール街を占拠せよ)キャンペーンの様子 Photo by gettyimages

「私たちは99%だ」として、「アメリカン・ドリーム」をつかんでいるのは1%の富裕層のみで、残りの99%は苦境に立たされていると訴えた。「アメリカン・ドリーム」という甘言ではごまかしきれない現実を、米国の人たち自身が白日の下にさらしたのだ。

その問題提起から10年余り。解決には至らないまま、社会の分断という現象が米国社会を覆っている。

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