それが秋葉原の衰退を直接、証明するとまでは、たしかにいえない。モードの場としての秋葉原ではもともと店の新陳代謝が激しく、他方では2007年につくられた秋葉原UDXを中心としてオフィスや飲食店の展開もさかんである。とはいえ空き店舗が長期間街の目抜き通りにみられ、また老舗のメイド喫茶などが退店している状況では、少なくとも「オタク」の街としての個性が失われつつあることは否定しがたい。

こうした事態を導いた原因は、ひとつにはあきらかにコロナ禍である。2021年11月、12月の休日の人流をみれば、秋葉原の回復は、東京駅や羽田空港など他の都市への発着となる場所を除けば、東京の街でも最下位の8位になっている(図1)。

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そもそも秋葉原はネットが興隆していくなかで、現場で同人誌を選び、新刊に触れ、メイドやアイドルに直接会うことを許す「対面」の街として発展してきた。しかしコロナ禍におけるさまざまな規制と不安の拡大、さらにはそもそも海外観光客が減少するなかで、「対面」の魅力は相対化され、店も維持しがたくなっているのではないか。
ただしコロナ禍だけを、秋葉原の停滞の理由とみるのは早計だろう。たとえば東京の繁華街でみれば、郊外の吉祥寺に加え、浅草・六本木などで人流の回復が素早い一方で、秋葉原の次に遅いのが渋谷になっている。
こうした各繁華街の差はひとつには、街に集まる年齢層のちがいによって生じていると考えられる。高齢者のほうがワクチン接種率が高く、積極的に活動しているという事情もあるかもしれないが、大局的にみれば、コロナ禍以前から続く少子高齢化のせいで、かつて若者が集まっていた街が衰退しているというより根本的な変化がみられるのではないか。