「バラバラ殺人」を犯した超エリート官僚が、「国民から英雄視された」意外な理由

日本で初めての「バラバラ殺人」の全貌
穂積 昭雪 プロフィール

山田と鈴木はすぐに意気投合し、山田のインド調査には米の専門家として鈴木の次男を同行させるなどしていた。

評判は悪いが米を見る技術は確かである鈴木と、未知だった外国米の調査を担当している山田はれっきとした「パートナー」であり、山田は鈴木から米についてのアドバイスを手に入れ、一方の鈴木は山田から政府筋の情報を手に入れることで巨額の富を得ていたのである。

だが、若き野心家である山田憲は、既に一介の農商務省の使いである身分に嫌気がさしており、自身も鈴木のように米穀投機(米の相場の変動を利用し利益を得ること)で一儲けし資産を蓄えようと考えた。

〔PHOTO〕iStock
 

だが、商売経験のない山田には米の相場を読み解けるほどの力はなく、失敗。当時にして1万円(500万円)ほどの借金をこしらえてしまうことになる。

プライドの高かった山田は、自身の失敗により借金を背負ってしまったことを許せず、挫折した。だが、いつまでも落ち込んでいるわけにはいかない。

山田は借金の返済と今後の投機のための資金として5万円(およそ2500万円)の費用が必要と考え、鈴木に金を融資してもらうことを考えた。だが、交渉相手は金に汚い「ズル弁」こと鈴木である。一筋縄ではいかない。

そこで山田が考えたのが「外米取引商」の資格である。当時、海外の米を輸入し販売するためには政府公認の資格が必要であった。

外米取引商の資格を持っている米問屋は日本で数件ほどしかなく、鈴木の「鈴弁商店」も資格が欲しい問屋のひとつだった。

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