狼狽した理事長
(前編より続く)
ところがこの説明が、破綻する事態となった。
SAY企画問題を長く追及してきた立憲民主党の長妻昭衆議院議員と、国民民党・新緑風会の上田清司参議院議員が、図らずも2021年4月から6月にかけ国会で相次いで質したことによる。

これまで国会で水島理事長は、氏名とフリガナの読み込みが悪かったので、その二情報を切り出して中国に送っていたと答弁している。しかしSAY企画が処理した約501万件の申告書のうち、「手書き様式の申告書」はわずか2万件、全体の0.4%にすぎないことが判明した。あとの499万件は「印刷様式の申告書」で、氏名とフリガナが前もってきれいに印字されている。ということはOCRで読めるはずなのに、どうして「印刷様式の申告書」からも氏名とフリガナを切り出し、中国に送ったのか。
この質問に、水島理事長はすっかり狼狽してしまい、か細い声で意味不明の答弁をするのがやっとだった。
「私どもは、SAY企画が私どもに伝えると言ったことを確認したわけでございまして、私どもが読み取れないというふうに申したわけではございません」
ちなみに、「印刷様式の申請書」と「手書き様式の申請書」の違いは、前者はすでに年金を受給している人を対象にしたもので、前年までに「扶養親族等申告書」を提出してあるため、機構で保有しているそれら個人情報をあらかじめ印刷して届け、漏れや誤りがないかを確認してもらったのち、返送してもらうものだ。後者は、あらたに年金を受給する人用のもので、機構で個人情報を保有していないため、本人に直接手書きで記入してもらう様式となっているのである。
この国会審議で明らかになった事実をもとに、わたしは水島理事長に再度の説明を求めたところ、前述したように田中企画調整監は、水島理事長と真逆の説明をした。それが「議事録(案)」から消えていたのである。