2021.12.28
# ライフ

山中伸弥「AIを良き同僚、部下として使いこなしたい」

藤井聡太×山中伸弥 スペシャル対談
分野は違っていても、過酷な競争の世界で最前線で前人未到の挑戦を続ける藤井聡太棋士と山中伸弥教授。彼らの日常の準備、学び方、メンタルの持ち方、AIとの向き合い方…。日々努力を続けるすべての人へ贈るメッセージを『挑戦 常識のブレーキを外せ』からピックアップしてお届けします。

信念や勘が成功確率を超える

山中    確かに今の時点で考えられているAIは、「問題解決」という点では人間の能力をはるかに上回っていますよね。特に大量のデータを処理するような問題解決では人間よりも圧倒的に優れています。

でも創造性という点では、やはり人間が勝っているんじゃないかなとも思うんです。60歳近い僕の脳は、過去の知識とか経験に基づいて、得られたデータをどう解析するかを考えているんですね。これはもうAIのほうが優っているかもしれません。

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一方で、今の藤井さんや僕が若かったころは、経験がないにもかかわらず、そのぶんいろんなものを生み出せる、若さゆえの創造性があるわけです。それは現時点のAIでは、まだまだ人間にかなわないんじゃないかなと僕は希望を交えてそう思っています。

ただ、AIの進歩はすごいですから、クリエイティビティ、創造性の部分をも、人間が教えることでだんだん獲得していく。その能力でさえ、やがていつかは抜かれてしまうかもしれないですよね。僕はAIの専門家ではないので、間違っているのかもしれないんですけれども。

藤井    今のAIというのは、たとえば将棋のような閉じたゲームの世界では、人間を圧倒的に凌駕するような存在です。けれども一方で、よりオープンな場合や創造力が問われるようなところで、人間を超えるようになるかと言うと、まだすぐにはそうはならないのかなと自分も感じます。

 

山中    だって生物が生まれて何十億年かで、こういうクリエイティビティを持つ生物が登場したのはごく最近で、地球上では人間だけですよね。AIの登場となると、本当にごくごく最近です。なかなか将来の予測は難しいですよね。でも希望としては、いつまで経っても人間はAIにまねできない創造性を持っているんだと思いたい

研究に関してもそうだし、たとえば企業の経営や政治の判断、将棋の次の一手もそうだと思うんですけども、どういう手を選ぶかという時に、おそらくAIだったら、過去のさまざまなデータから確率論で決めると思います。今、右に行ったら成功確率が60パーセントである、左に行ったら40パーセントである、だったら六60パーセントを選ぼう、という判断をおそらくAIはするでしょう。

でも人間はそうでもない。「普通の人は右の60パーセントのほうを選ぶだろうけれど、自分はどうしてもイヤだ」ということがありますよね。今までの信念や勘から「自分はどうしても左に行きたい」という意思決定があって、それがじつは成功につながったという例は山ほどあります。そこが人間の面白いところだと僕は思うんです。

そういう信念や勘に基づくような判断がAIにできないんじゃないか。やっぱりAIは確率でドライに判断する。60パーセント成功と40パーセント成功だったら、60パーセントのほうを常に選ぶだろうなと思います。

もちろん長い目で見たら、60パーセントを選択するほうが、最終的には集団としては、よりいいのかもしれません。でも人間って集団だけが大切じゃないんですよね。個々の人生もまた同じようにものすごく大切ですよ。

AIの判断は個人個人の幸せがどうこうというよりは、人間社会全体が幸せになるような価値評価になる。そうなってくると、個人個人に対する判断ではなく、常に社会全体に対する判断になってしまって、何かあんまり面白くない世界になるんじゃないかなという気がして……というようなことをいつも考えています。

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