2021.12.27
# ライフ

藤井聡太「棋士“代表”としての語られることの責務にどう向き合うか」

藤井聡太×山中伸弥 スペシャル対談
山中 伸弥, 藤井 聡太 プロフィール

メンタルをどうコントロールするか

山中    大事なのは、プレッシャーを感じながら、自分のメンタルを自分でマネジメントできるかどうかですよね。対局をしていたら、悪い手は誰でも指すと思うんです。でもその後、どれだけ冷静に元に戻れるか。一手が一手で済んだらいいんですけど、一手のミスが三手にも五手にも連鎖反応でつながっていく。それはスポーツでもすごく多いことですよね。

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藤井    悪手を指したと思ったら、完全に切り替えるというのは、やっぱりなかなか難しいなと感じます。悪手には対局中に気づくものと、対局後に振り返って気づくものの2つがあるんですが、自分の場合、対局中に気づいた時はやっぱり精神的にかなり落ち込みます。でも対局中に以前の局面を考えるというのはマイナスにしかならないので、ぱっと切り替えて、今の局面における最善手を探すようにしています。

山中    テニスの大坂なおみさんは以前、ワンショットのミスで自滅して、せっかく勝っていた試合の流れがそこから変わるというようなことがありましたよね。スポーツ選手はそういうことが多い。

でも今、スポーツ界では、メンタルトレーナーのようなプロが入って鍛えることが普通になっていますよね。将棋ではどうやったら敗戦を引きずらないかと指導してもらえるようなメンタルコーチはいないんですか?

藤井    それを専門にしたコーチはいません。将棋は対局時間が長い場合が多いので、精神面が直接的に勝敗に影響するという場面がスポーツよりも少ないのかな、と思います。

山中    なるほどね。持ち時間もあるしね。球技なんて次から次に来ますよね。立ち直る前に三振してしまったり、エラーをしてしまったり、セットを取られたり。だからスポーツをしている人は座禅やヨガをしたりイメージトレーニングをしたり、いろいろな方法で自分のメンタルのコントロールを工夫しています。

棋士の方は、そういう意味でのトレーニングはされているのかな。指し手の研究はみなさんされていると思うんですが、いかに脳を100パーセントの状態に持っていくか。自分の潜在能力で100あるものを100出す。どうやって自分のメンタルのコントロールをするか。そういう術を自ら身に付けているんですか。師匠が教えてくれるわけではない。

藤井    はい、教えてもらうということではなくて、そういった感情のコントロールは、人それぞれというようになっています。

山中    ある意味、時間の感覚が違うかもしれないけど、今メンタルトレーニングの世界はものすごく進んでいるので、そういうのを1回取り入れてみてもいいかもしれませんね。新しい時代を生きる棋士として、これまでの人がやらなかったことをしてみるというのは、意味があることなんじゃないかと思います。

藤井    はい。やっぱり精神的な要素はかなり対局に影響してくると思うので、その辺りも突き詰めていったほうがいいのかもしれません。 

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