2021.12.27
# ライフ

藤井聡太「棋士“代表”としての語られることの責務にどう向き合うか」

藤井聡太×山中伸弥 スペシャル対談
分野は違っていても、過酷な競争の世界で最前線で前人未到の挑戦を続ける藤井聡太棋士と山中伸弥教授。彼らの日常の準備、学び方、メンタルの持ち方、AIとの向き合い方…。日々努力を続けるすべての人へ贈るメッセージを『挑戦 常識のブレーキを外せ』からピックアップしてお届けします。

相手が誰でも意識しない

山中    将棋の世界でも、それはもう大変な争いでしょう。みんなで手をつないで強くなりましょう、というふうにはいかないはずですよね。

藤井    そうですね。とくにソフトによる事前研究は激しくなっていると思います。

山中    そうすると、誰かが新しく編み出した戦法なんかも、たちまち研究されてしまうということになるんじゃないですか?

山中伸弥氏(左)、藤井聡太氏
 

藤井    はい。今は序盤の研究でも、かなりソフトが使われています。ソフトによって見直された戦法はもちろんあるんですけど、逆に評価値が出ない戦型というのもあります。評価値的に高い戦型はよく指され、新しい戦型はなかなかソフトに評価されませんが、ただ、相手に研究されていないことが、それだけアドバンテージになるわけです。

でも逆に複数回やって相手に研究されてしまうと、アドバンテージではなくなってしまいます。なので、なかなか新しい戦法、斬新な指し方が長く指されにくくなっているのかなと思います。

山中    そうすると、むしろ藤井さんの相手が1回限りの戦法をいろいろ編み出して、藤井さんに立ち向かってくるという形になっているんですか。

藤井    自分自身はけっこうオーソドックスなタイプなので、結果的に相手の工夫に対応するような展開になることが比較的多いかもしれません。

ただ、序盤を研究すると言っても、あらゆる指し方を研究するのは、もちろん不可能ですし、指されていない序盤の戦型ももちろんたくさんあります。結局のところ、研究で調べ尽くすことはできないので、新しい指し方に対しても対応できる判断力というのがいちばん重要になるのかなと思っています。

山中    そこで実力が問われるわけですね。対戦する相手によって心の持ち方って変わるものですか。たとえば羽生さんだと、人柄は温厚だと思いますが、将棋となると対局していて怖く感じることはありませんか?

藤井    いえ、対局が始まってしまえば、その相手が誰であろうと自分は気になりません。やはりどのような状況でも、落ち着いて自分の力を出せるというのが非常に大事なことなので。

山中    確かにそうじゃないと、やってられないよね。相撲や柔道だとにらみつけたりする人もいるんですけど、将棋はそんなのありませんよね。

藤井    今の若手の棋士の中には「感情はいっさい出さないほうがいい」と言う方もいます。

山中    そうですか。藤井さん自身も、あんまりプレッシャーみたいなものは感じないでしょう?

藤井    そうですね。自分はあまりプレッシャーは感じないです。どの対局でもやること自体は同じなので、平常心でと思っています。もちろんゼロということはないですが、それが何かパフォーマンスに影響するということはないと思います。

山中    相手に勝つというより、自分を高めるほうに向いている。

藤井    ええ。やっぱり平常心でその局面一つ一つ、最善を追求していくことが、結果的にも勝ちにつながることかなと思っています。

山中    対局前に緊張して眠れないということもない。

藤井    それはありません。対局前でも7時間、十分寝ています。むしろ対局後のほうが難しいです。2日制の場合、1日目の夜は対局の前より眠れないことが多いので、そこは自分として課題かなと感じています。

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