長期間を見越した製造がSUVには必要
■ジムニーの納期が長い理由(2):フルモデルチェンジの実施は20年ぶりだった
2つ目の理由は、ジムニーのフルモデルチェンジが20年ぶりに実施されたことだ。
ジムニーのような悪路の走破を目的としたSUVは、生産台数が多くない。
それなのに耐久性の優れたラダーフレーム構造のシャシー、悪路に対応した車軸式の足まわり、悪路で駆動力を増強させる副変速機を備えたパートタイム式4WDなど、大量に売られる乗用車とは異なるメカニズムが多く採用される。
生産台数が少ないのに独自のメカニズムが多いと、長期間にわたって製造しなければ収支が合わない。特にジムニーは軽自動車だから、悪路向けのSUVでも、価格は最も高いXC(4速AT)が187万5500円だ。
小型車のジムニーシエラでも205万7000円に収まる。これでは収支を合わせるのに時間が掛かり、先代型は20年間も製造された。
しかもジムニーの販売台数を振り返ると、いつの時代でも1年間に1万3000台前後を販売している。2010年から2017年だけで、国内販売累計は10万台を超えるから、新型が登場すれば大量の乗り替え需要が発生する。
それなのに前述の通り生産規模が小さいため、受注に追い付かず納期を遅延させた。
2018年の発売当時、増産して納期を短縮できないのかスズキに尋ねると、以下のように返答された。「ジムニーが今後も好調な売れ行きを保てるなら、増産にも踏み切れる。しかしこの需要はいつまで続くか分からない。生産規模を増やした後で売れ行きが下がると、余剰な生産設備を持つことになるから、生産規模の拡大は難しい」。