オリジナリティと百人一首との類似
『ドレミファドン』と言えば、イコール「イントロクイズ」と言ってもいいだろう。レギュラー放送時は、さまざまな音楽クイズが放送されていたが、その後ほぼイントロクイズに収れんされていった。
イントロクイズは、年齢性別不問で楽しめる単純明快なクイズであり、エンタメにテンポのよさを求める現代人の好みにも合っていて、勝負の緊張感もある。
さらに言えば、上の句を読んで札にふれるスピードを競う、百人一首に似たゲーム性も、日本人として親しみが持てるところだ。百人一首に似ているからこそ、今回のような「正月特番として最適」とも言える。
そんなイントロクイズを考案したのは、『ドレミファドン』のプロデューサー・ディレクターを務めた王東順氏であり、引いてはフジテレビの発明品と言っていいだろう。3年前に『フジテレビ批評』という番組で王氏と対談の機会があったが、「オリジナリティある番組にこだわって制作していた」ことを語っていた。
事実、王氏は『ドレミファドン』でイントロクイズを作ったほか、『なるほど!ザ・ワールド』では海外ロケクイズの先駆けとなり、加えてモータースポーツから発想を得た「上位が圧倒的に有利で下位が圧倒的不利」という斬新な席順を採用。『クイズ!年の差なんて』でもジェネレーションギャップを初めてクイズに採り入れた。
これらの番組に共通しているのは、新たなクイズ番組を作っていることだけでなく、それが「家族で安心して見られる」こと。差別的・暴力的な要素がなく、内輪ノリや下ネタを採用しない王氏のポリシーは、コンプライアンスの遵守が求められ、テレビに向けられる目が厳しい現状にフィットしやすいのではないか。
2020年春の視聴率調査リニューアルで、コア視聴率(13~49歳の個人視聴率)が最重要視されるように変わり、ますますファミリー層向け番組のニーズは高まっている。その点、「ファミリー層向け番組の名プロデューサー」と言われた王氏の番組が令和の今も生き残っているのは必然なのかもしれない。