英語が聞き取れないのに教授に話しかけられ…

蚤の市で買ったジャケットを脱いで本気モードになって講義を受けていると、構内にいる生徒から次々と手があがる。このビジネススクールはほとんどがディスカッション形式らしく、受け身だけの授業は一般的ではないらしい。

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私は懸命に聞き取ろうとするものの、全員凄まじいスピードで英語を話すので全然聞き取れない。「これが世界の第一線で羽ばたこうとしている人たちのテンポか……」私は喋っている人の顔をポカンと見つめるだけで精一杯だった。

「×◯△◇※□……で、今日はどうだったリエコ?」

え! 教授が私に話しかけている? いや、無理! 何にも言えないよ……講義の内容すらよく掴めてないんだから。静まり返る構内で知的すぎる生徒たちが私を一斉に見つめている。マズイ……早く何か言わなくちゃ!

凍りついた私に、隣にいたハンスがノートを横滑りさせて書きなぐった文字を見せてきた。【ランチの話して!】

「えーと、ラザニアが持って帰りたいほど美味しかったです……」と咄嗟に言った私。一瞬全員が唖然とした表情になったかと思うと、一斉に笑い始めた。

「君、ユニークだね」教授がそう言うと、構内はピリリとした空気感からなぜかほわ~んとした空気感へと変わり、講義は無事終了した。

「ハンス、ありがとう」緊張で汗をダラダラかきながらハンスにお礼を言うと、彼は言った。「もう帰っちゃうんだよね? リエコは面白いから、まだスイスにいるなら一緒にカフェに行ったり、ご飯に行ったりしない? Eメール教えてよ」

とりあえず私はハンスとEメールを交換すると、後日ジュネーヴでデートをすることになった

スイスのマッターホルンの荘厳な姿に感動!写真提供/歩りえこ