2021.12.28
# 動物

3匹に1匹の死因とも言われる猫のがん…専門医が伝えたいこと

飼い主に知ってほしいこと
飯田 一史 プロフィール

――進行が早いということは、がんは見つかってから亡くなるまでが短いから注目されづらい面もあるのでしょうか。

小林 どうでしょう。正確に言えば進行速度はがんの種類にもよりますし、ニャンコにもよります。人間のがんにも膵がんのように急激に進行するものもあれば、早期発見して取ってしまえば根治できるものもありますし、進行速度も人によって違いますよね。それと同じです。

――かつてと比べて飼育環境が改善されて猫が長寿になりましたが、年を取るとかかりやすくなるがんについて、昔はそれほど話題にのぼらなかったのは寿命の違いもありますか。

小林 それはあるかもしれません。室内飼いが一般的ではなかったころには多くのニャンコが感染症や交通事故で亡くなっていましたから。飼い猫が長生きするようになった結果、目立つ病気になってきた。

私が専門医になった2001年当時、全米でもがんの専門医は約120名しかいませんでした。また、国内で小動物の臨床腫瘍学に携わっている獣医師も少なく、まだまだ手探りな状態が続いている状況でした。それから20年経ち、今では日本の獣医学でもがんに対する知見が深まってきたことも変化の背景のひとつかもしれません。

 

猫の飼い主は犬よりも病院に連れて行かない傾向にある

――うちの猫は以前「肥満細胞腫」にかかりましたが、診断されたときには「肥満? 太ってるから?」と思ったくらいで、それが「猫のがんの一種」だとは、聞いた瞬間にはピンときませんでした。やはり「まさか自分の猫が」と思っている飼い主が多いのでしょうか。

小林 当然ながら本当は早期に発見できたほうがいいのですが、そもそもニャンコはワンコと比べると、病院に連れて行く機会が少ない傾向があります。体調が悪くなってから病院に来て、そこで病気が見つかることが多い。ワンコはフィラリア予防薬の投与や年1回義務付けられている狂犬病の予防接種などで病院に行く機会が比較的あるんですね。

飼育頭数で言えばニャンコはワンコと同数以上いるはずなのですが、ニャンコのほうががんセンターで診察する割合が少ない。もちろん、ワンコとニャンコではがんになる比率はそもそも違う可能性がありますが。

ご家族があきらめてしまうのか、あまりつらいことをさせたくないと思うのか……背景についてたしかなことは言えませんが、ニャンコの飼い主さんはワンコの飼い主さんと比べてがんセンターでの受診にまで至らない理由が何かあるようです。

――診療にかかるお金を気にしている可能性はありますよね。

小林 気にしない人はほとんどいないと思います。検査や治療にどのくらいかかるのかわからなければ、それは行きづらいですよね。「診療費が平均何円かかっている」というデータを出している団体もありますが、動物病院によっても、また、どんな治療をするのかによっても金額は変わってきますので、「だいたいいくらかかります」とまとめるのは難しいです。

ただ、治療開始前に、われわれは「こういう治療をするならこのくらいかかります」というお見積もりを必ず出して、飼い主さんの同意を得てから治療に臨みます。

ですからお金の心配もあるでしょうが、まずはホームドクター(かかりつけの動物病院)のもとに連れていってあげてください。そこでホームドクターから適切な診断と予後判定をしていただき、お金のことも含めて飼い主さんと獣医師とで相談し、どんな方向性でやっていくのかを決定するとよいでしょう。ホームドクターのもとで治療するでももちろんいいですし、徹底的にがんをやっつけることをめざそうと考えるのであれば、ホームドクターを介し大学病院や二次診療施設などにご連絡ください。

SPONSORED