子育てほど難しいことはない。親のちょっとした選択によって、子供の将来が大きく変わる可能性があるからだ。世界で活躍するあのスター選手の家庭は、いったいどんなふうに育てていたのだろうか。
夫婦喧嘩をしない
投げて9勝、打って46本塁打。メジャーリーグを震撼させた大谷翔平(27歳)に限らず、'19年の全英オープンで優勝を果たした渋野日向子(23歳)や、フィギュアスケートの「絶対王者」羽生結弦(27歳)など、近年、世界のトップレベルで活躍する日本人アスリートが増えている。

ここぞという大舞台で本領を発揮できる彼らのメンタリティは、いかにして育まれたのか。
大谷ら多くの「超一流選手」の親を取材し、書籍『天才を作る親たちのルール』を著したスポーツライターの吉井妙子氏は、「両親たちの姿勢には共通点がある」と語る。
「それは、頭ごなしに怒らないこと、そして子供の考えを否定しないことでした。『なぜできないのか』『お前はダメだ』と言われた瞬間、子供は強烈なコンプレックスを植え付けられてしまう。その二つを『しない』ことが、子供たちの個性を大きく育てているのです」
〈(昔の親は)何をしてやろうかと考えた。けれどいまの親の愛情は『何をしないか』を考えなければならない〉
'07年に亡くなった教育心理学者・河合隼雄氏は、著書の中で、いみじくもこう書き残している。
良い学校に合格するために塾に通わせる。音楽の素養を身につけるためにピアノを習わせる--。子育ては「足し算」の発想になりがちだ。
だが、「超一流」を育てた両親たちの振る舞いをつぶさに見ていくと、吉井氏が言うように、「何をするか」ではなく「何をしないか」に深く注意を払っていることがわかる。